「ピラティス男子」と聞いてまず女性の影響を想像した自分が悲しい

男性がしていると意外なもの、あなたは何を思い浮かべますか?
こういう議題のとき、ひと昔前の定番は「メイク」だった。メイクをする男性が増えてきた頃、テレビ番組ではメイク男子として、有名人や話題のインフルエンサーを取り上げ、特集がよく組まれていたのが懐かしい。
先に言うと、私はメイク男子について違和感を覚えることは全くなかった。それも、自分の肌を綺麗に見せるため、自分の雰囲気を変えたいため、これらを理由に「メイクがしたい!」と思う男性の気持ちがわかったからだった。共感ができた。それに、芸能人やアイドルが舞台メイクを施すと知っていたため、男性メイクのイメージが掴みやすかったのもある。
自分の中で物議を醸したのは「ピラティス」だった。
きっかけは、とある男性が「ピラティス始めたんだ~」と教えてくれたこと。その男性に好意があった私は、それを聞いたときに「女の人に教えてもらったな。女の人の趣味で、一緒にやってるんだな」と、すぐに思ってしまい、そして、ひどく落ち込んだ。
ピラティスというと、韓国アイドルが先駆けとなって流行したヨガの進化形。天井から吊されたハンモックのようなもので、身体を柔軟に動かすもの。そんな印象があった。ピラティスは、テレビ番組で女性のモデルさんやYouTuberが紹介していて知った。「ピラティス、男性……?」が、なかなか頭から離れなかった。
聞いた当初のモヤッと感は消えず、後日またその話を思い出した。
なぜ、男性がピラティスをやっていると聞いたとき、女性のかげを感じてしまったのか。なぜ、男性自身に興味関心があって、ピラティスに通い始めたと思えなかったのか。
はじめ、女性の影響としか思えなかったことが、振り返ると少し悲しかった。反省すべきことだとも思った。
これはもう向き合うべき課題だ!と判断した私が、まず考えたのは、マスメディアの影響。テレビ番組で、男性がピラティスをやる姿を見たことがなかった。その結果、男性がピラティスをやっている想像がつかなかった。画がイメージできないというのは、非常に影響が大きい。これは、男性がピラティスをやっている動画を見れば、イメージが湧きそうだと前向きに検討した。
次に思ったことは、自分の想像力が乏しいのでは?という疑問。自分の考えが知らず知らずのうちに、凝り固まっていたのかもしれないということ。
女性のイメージが強いものは、メイクやピラティス、昔でいうと料理など。男性のイメージが強いものは、筋トレや車(ドライブ)、プログラミングなど。
一例をあげてみて、どれも性別のイメージが強いだけで「女性だからしてはいけない」「男性だからできない」というものが一切ない。あぁ、自分はまだまだ固い人間だったかもしれない……と、気付かされる。
それに、それぞれのイメージを植え付ける媒体、テレビ番組や雑誌は必ずしも、正しい模範を示しているわけではないと、当たり前のことを思い知った。このとき、ピラティスを教えてくれた男性に対して、申し訳なさでいっぱいだった。また、同時にありがとうの気持ちも芽生えていた。「カチコチの思考を、柔軟にしてくれて感謝。ありがとう!」と、心の中で彼に礼を言う。
ピラティス、意外なところから考えが一新されることになった。こういう偏見は、普段あまり意識していないだけで、人それぞれに存在するのかもしれない。
偏見があることが良いのか悪いのか、それはわからない。けれど、偏見があることで相手を勘違いしたり、勝手に傷ついたり傷つけたり、そういうのは勿体ないと思う。今回の場合もそうだった。
色眼鏡は、オシャレに使うだけで十分なのかもしれない。
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