わたしには大学時代に5人で密度の濃い時間を過ごしてきた友人がいる。大学時代から卒業した後も、定期的に旅行をしている。

東北から沖縄まで各地へ赴き、次の行き先をどうしようと悩んだところ、「みんなの地元に行きたい」と1人が言った。

そこから私たちの地元巡り旅が始まったのだ。

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毎回、地元の当人がアテンドをする形になり、ちょっとマイナーな観光地に行くことや本人が心からおすすめするグルメを食べることができる。
そして、毎回ザ観光地ではないところへ行き、イベントごととしては地味ではあるが、彼女が育った土地の気候や雰囲気をゆったりと味わえる。
大学時代に出会った私は、それ以前の彼女を育てた土地に思いを寄せる。

わたしの地元を旅する会は、どきどきであった。どこに連れて行こうかとこんなにたくさん悩んだことはない。
見慣れた土地と見慣れた顔。だけれど、その組み合わせは初めて。
「連れて行くところにどんな感想を持つかな」「料理は口に合うかな」とそわそわし、なんだか、自分の生い立ちの中に入り込んでもらった気分。

嬉しいような恥ずかしいような新鮮な気持ちで一杯であるとともに、自分のことをより知ってもらえたように思え、さらに親密になれる旅だった。