先輩に憧れて身振りも表情も真似した。出会いの季節が楽しくなった

わたしの強みは、初めましての人にも臆せずに話しかけられるところだ。もちろん、最初からできたわけではなくて、色んな経験を積んで、少しずつ強みに変わっていったからこそ、自信をもって言えるようになった。
もともと人見知りで、誰かの後ろに隠れていることが多かったと思う。だから、「おとなしい子」というのが、一番最初のわたしのイメージだった。
人と目を合わせることは今でも苦手で、そんな風には見えないと言われることも多い。
そんな、自分を変えることになった大きなキッカケは、アルバイト先の先輩だったと思う。
先輩はわたしより少し背が高くて、初めて彼女をみた人は、その印象的な大きな瞳に目がいくと思う。マスクをしていても表情がコロコロ変わって、目も大きく見開いたり、急に目を細めたりと緩急の付け方が上手だった。そんな「わたしは今こう思っています」がとても分かりやすい女性だった。
身振り手振りも伝わりやすく、お店にどんなにお客様がいらっしゃっていても一人で話をまとめたり、孤立している方がいても仲間の輪に自然に入れてくれる。この人がいたら安心できる、大丈夫になれる。お世辞を抜きに「先輩みたいになりたい!」と、心から思える人だった。
出会えてよかったと思える人は、両手に収まらないくらいにいるけれど、彼女のようにハキハキ喋って、テキパキ動いて、真似したいとまで思える人は初めてだった。
私がこう言うと「やめてよ〜」と笑うところまで想像ができる。時々、お酒を飲みすぎて酔っ払って寝てしまうところも含めて、とっつきにくいところはなくて、むしろ親しみやすい。そんな先輩を横目に見ながら、自分が思っている何倍も表情筋を動かすことから、最初の一歩を踏み出した。
こういった経験は積み重なっていくもので、入社式のオリエンテーションでも、実際に生かされた。赴任地はバラバラで、同じ人はほとんどいない。それでも、せっかくの同期なんだから一人でも多く覚えたい気持ちで、たくさんの人に声をかけた。
名前の読み方が難しい子や、内定式で少し話しただけの私を覚えていてくれる子。珍しい苗字の子に加えて、地方から上京してくる子。それに、院卒の私と違って、高校を卒業してからすぐに就職という子もいた。
そんな十人十色の個性があることを知っていく、覚えていくことがとにかく楽しくなっているわたしが、気がつけばそこにいた。
あの頃の内気なわたしは鳴りをひそめ、どこか遠くで羨ましそうに見ているだろう。昔の自分のように声をかけようか迷っている子を見つけて「一緒にやろう」と思えるようになったのも、先輩との出会いがあったからだと確かに感じていた。
まだ研修が始まったばかりで、仕事はこれからという感じだけれど、この気持ちを忘れずに沢山の人と出会い、自分のこともまた覚えていってもらえれば、こんなに幸せなことはないと思う。
4月がはじまってから降り続いていた雨も、もう止んでいる。わたしたちの門出を祝うように太陽が顔を出していた。これからの新しい生活も、満開の笑顔で臨みたいと思う。
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