武器にも凶器にもなる色メガネ。業績をあげたのはあの秘策があったから

「色メガネ」という言葉だけ聞くとネガティブな印象があると私は感じる。
しかし思い返せば、社会人として初めての仕事で私は効率を上げるために「色メガネ」を使って仕事をしていた。
私は新卒入社から4年間、接客業に従事していた。
丁寧な接客を心がける反面、対応しきれない程の来客数に対して上司からは「次のお客様が待ってるから急いで!」「もっと周りの状況を見て、巻きで対応して!」「時間なくてもしっかり提案して数字取ってよ!」という少々矛盾を感じるようなインカムが飛ぶことが当たり前の日々だった。
そんな状況下で私が編み出したのが、「色メガネ戦法」だ。
色メガネ戦法とは、見た目や雰囲気、話し方、今の契約状況から総合的に考えて、時間をかけて対応するべきか(契約が取れそうな相手か)を判別する方法だ。
もちろん、来客数にゆとりのある状況下ではその戦法は使わず一通り提案したのだが、その結果を踏まえると体感8割くらいは色メガネ通りの結果であった。
営業が苦手だった私は色メガネを使って効率よく案件を捌く、それによってより多くの案件を担当することで「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」というサイクルを編み出したのだった。
最初はこっそり自分の中だけで使用していた色メガネ戦法だが、勤続年数を重ねるにつれ、コンサルティングと呼ばれる業務を任されることになり、この戦法が大いに役に立つこととなった。
コンサルティングの仕事は接客スタッフに対して、応対に入る前にどのような商材が成約できそうであるか、成約に向けてどのようなトークをするかを伝えることがメインの仕事だった。ここで重要になってくるのが色メガネである。契約状況からどのような商材を提案するかを決めることは誰でもできる。だから私は見た目や年齢層から考えた、商材の獲得に向けてどのようなトークをするかを重点的にスタッフに伝えた。また、時間をかける必要のない顧客であると感じたときはその旨も上司にバレないようこっそり伝えていた。
特に新人のスタッフにはトーク内容を一言一句伝え、教えた台本通りに話してきてねとお願いしていた。このやり方は上司も驚くほどの成約率があり、新人スタッフの成功体験としてとても重宝された。
しかし色メガネで見る側であった一方、色メガネで見られる側でもあった。
お客様からの質問に対して瞬時に答えられなかったり、答えは分かっていても誤った案内をしてご迷惑をおかけすることがないよう、念の為システムで調べてから案内することがあると「女だからこの程度のことも分からないんだろう!」「男のスタッフに変われ!」と言われることも多々あった。だいたいそのような発言をするのは50代以上の方が多かったので、「女」「小娘」という色メガネで見られていたのだろう。しかし私は、社内では難解な案件は栗村さんに担当してもらったら良いと言われていた程度には知識が豊富であった自負があるので、私よりも知識レベルは下がるのにいいのかな……と思いながら男性陣に変わってもらう性格の悪い女だった。
ネガティブな印象のある色メガネ。自分の武器にすることも他人を傷つけることもできる。
色メガネで見ることで自分が損してしまうことだってあると思う。
私はそんな色メガネと時代の変化に応じて上手く付き合っていきたいと願う。
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