女子高で「女の子」から「ひとりの人間」に変わった、わたしの決意

「あなたたちはこれから3年間で、女の子から『人間』になっていくのです」
わたしの高校生活は、副校長先生からのこの言葉で始まった。今からちょうど3年前の4月、入学式でのことだった。
わたしは3年前初めての女子校に入学し、そして先月卒業した。決して有名な進学校ではないし、わたしも家から近いという軽い理由だけでその女子高を志望した。しかしそこでは偏差値では測れない、素晴らしい経験ができたと思う。それは、他でもない女子高の女友達や教師たちのおかげだ。
冒頭に書いた副校長先生の言葉の意味は、入学から1ヶ月くらい過ぎて分かった。
この学校には、男子生徒がいない。だからわたしたちは、今まで中学で基本男の子たちが引き受けてきたことを今度は自分たちでしなければならない。たとえば重いものを持ったり高い所に登ったりの作業も、全部女の子であるわたしたちの仕事となる。
どれだけ女の子らしくて顔が可愛い子でも、ここに来ればみんな「女の子」ではなく、性別に関わらず「人間」として扱われ、その通りに動く。
わたしにとってその光景は最初慣れなかったが、2、3ヶ月もすればわたしも行事の準備でパイプ椅子を両腕で6脚も持てるようになった。
これだけ聞くと女子高生活は大変に思えるが、実は真逆である。人間関係においてはとても快適だった。教室には担任教師以外女の子しかいない。異性の目がない教室で良くも悪くもみんな遠慮がなくなり、自分の本音を堂々と言うようになったのだ。
最初はわたしも驚いたが、だんだん釣られて自分の意見を話せるようになった。中学時代にできもしなかったことだ。あの時言いたいことが言えなかったのは自分の性格が気弱だからだと思っていた。しかしそれだけではなくクラスの男の子たちからどう見られるか、どう言われるのか恐れていたのもあったと今では思う。
クラスのみんなもまた中学までずっと共学だったのもあり、わたしたちは女子高でそういった抑圧から解放されてのびのび過ごせていた。
そんな高校の友達はしっかり者で自立した性格の子が多かった。みんなそれぞれ外交官や公務員、管理栄養士など自分の就きたい職業や分野を具体的に決めており、将来は結婚しても自分でお金を稼いで生きていきたいと話す子が多かった。
将来やりたいことなんてまだ考えてもいなかったわたしは彼女たちを見て心の中で焦ることが多かった。しかし彼女たちの姿は、わたしが大学で学びたいことについて考え始める大きなきっかけになった。そういう意味で今では彼女たちに感謝している。
加えて教師たちにも感謝している。中でも一番感銘を受けたのが、ある古典担当のベテラン女性教師だ。
彼女いわく、大学進学は彼女たちが高校卒業した当時、女性の中では少数派だったという。その時代の女性は大学に行けば嫁のもらい手がなくなるとまで言われていたらしい。女性が学ぶことが今より社会的に難しかった時代だ。
しかし彼女は教師になるために、そして学問を深めるために大学進学を選んだという。教員免許を取って高校教師になった後も、近々大学院に入りたいと授業でわたしたち生徒に話してもいた。わたしは、大人になってもなお学び続けようとする彼女のようになりたいと思った。
このように女子高生活はとにかく自由で、憧れの女性像に多く出会えて最高の環境だったと思う。周りの友達もそう感じたらしく、大学受験で女子大を志望する友達も一定数いた。
かくいうわたしはこの春、晴れて第一志望の大学に進むのを機に共学の環境に戻る。わたしは英語が得意だ。だから自分の英語力を活かし語学を極められる第一志望の大学に進学する。そして将来は外国人と関わる仕事につきたい。高校3年間で友達や先生と進路について深く話し合い、最終的にそう決めた。
今では女性が男性と同じくらいハードに働くことは珍しくない。わたしの友達の家も共働き家庭がほとんどだ。しかし日本のジェンダーギャップは118位と世界的には下位らしい。東京大学など最難関大学の男女比は女子の割合が20%にしか満たない。
わたしも去年、同性で同い年の知人に「女の子が高学歴って未だに結婚難しそうじゃない?」と言われたことがあり、女性が学問を若干軽視される風潮も残っていると思う。勉強以外でも、幼少期は「女の子なんだから」と控えめに振る舞うようしばしば求められたこともある。
それでもわたしは自分のやりたいことをやる。言いたいことを言う。学びたいことを学ぶ。自分が就きたい職業に就く。わたしは「女の子」ではなくひとりの「人間」だから。3年間の女子高生活の中で多くの友達や先生から導かれた、わたしの決意だ。
これが女子高を卒業した、わたしたちの強いとこ。
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