雨の日だけ現れる、私だけの色の空。お気に入りの傘で乗り切る梅雨

北海道では、蝦夷(えぞ)梅雨と呼ばれるものがある。
本州の梅雨とは少し異なっていて、雨の降る日が多い季節のことを総称してそう呼んでいる。
蝦夷梅雨は、サラッとした雨が草木に水を与えて、土とコンクリートの匂いを強くする。
さっきまで開いていた傘をたたみ、友達と喋りながら帰るあの道。
蝦夷梅雨の時期は、雨が降った後に眩しく太陽が出てくるので、よく虹が架かっていた。
それを見ながら、なんだかラッキーな気持ちになっていたものだ。
少しくらい服が濡れていても、風と太陽が乾かしてくれるような季節だった。
大学進学と共に上京した私。
本州の梅雨は地元と異なると理解していたが、あまりにも衝撃的だった。
ずーーーっと雨なのだ。
全く誇張せず、本当にずっと雨が降っている。
それも地元とは異なって、ジメリと肌にまとわりつく湿気で息が苦しくなる。
空気中の水分で殺されそうになるのは、本州の梅雨ならではだと思う。
ずっと雨が降るから空も暗く、気分も落ち込んでいく。
建物の中に入ると、クーラーが効きすぎているのか肌に張り付いた湿気が急激に冷えて、身体の温度がおかしくなる。
歳を重ねるにつれて、低気圧にもやられるようになってきた。
電車に乗ると全てがジメジメしていて、辛くなる。
梅雨は、その先に来る夏のためにあるのかもしれないが、最近の夏なんて猛暑で試されているじゃないか。
むしろ数ヶ月続く試練だ。
いったいなんのために梅雨があるのだろう。
野菜や作物のため……?
あぁ、そうだとしても梅雨なんてもう嫌だ……。
上京9年目、変わらずそう思っているが、1つだけ梅雨の時期にワクワクすることがある。
それは、お気に入りの傘を使うこと。
たまたま入った雑貨屋で、一目惚れした折りたたみ傘。
ハッキリとした青色に、大きめの白ドットが散りばめられている袋があって、傘の外側には同じ模様が入っている。
そして、内側には新緑のような緑色が一面に使われている。
持ち手は木製になっていて、使うたびに手に馴染んでいく。
こんな傘を使っている人は、街中でも見たことがない。
この傘を使うたびに、周囲とは異なるカラフルな色が目立ち、少しだけ心が明るくなる。
購入して6年目になるが、いまだに壊れることなく大事に使っている。
最近はリモートワークばかりで外に出ることが少なくなってしまった。
それでも、玄関にはいつもお気に入りの傘を置いている。
きっと、今年の梅雨時期も私のカバンにはお気に入りの傘が入っているだろう。
梅雨が嫌で仕方ない気持ちでも、傘を開くときは少しだけ気分が軽くなる。
空が暗くても、傘を明るくすれば良いのだ。
透明なビニール傘も便利で楽だけど、外の景色も空の重さも全部見えてしまう。
みんな、明るい色の傘を使ってみれば良いのに。
そう思いながら、雨の日だけ現れる私だけの色の空を楽しんでいる。
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