あ、血が出た。私は夕飯の席を立ち、慌ててトイレに向かった。脱いだパンツには赤いシミ。便器に座り紙で股を拭うと、ぬるりとした粘性の高い血の塊がべったり付く。ビデで股を洗い、汚れたパンツを手洗いし、人知れず新しいパンツにナプキンを装着して戻った私に、夫が不思議そうに「どうしたの?」と問った。

私が「生理きた」と言うと、「わかるんだ」と聞かれ、「うん、わかるね」と応えた。食事中に「生理でした!」と申告するのも人によっては抵抗感がありそうだが、私は質問に答えただけである。

アトピーで肌が弱いから、アラサーにして綿のパンツを愛用している

カレンダー的にもそろそろだと思っていた。私の生理は比較的順調なので、生理管理用アプリも使いやすい。それでもサニタリーショーツを穿かなかったり、出血に備えてナプキンをあてなかったりするのは、私がアトピーでとてもお肌がよわよわだからだ。

サニタリーショーツは蒸れるし、ナプキンは蒸れるうえに陰部と擦れて痒くなるので、極力つけたくない。タンポンを使うほどの経血量ではないし、布ナプキンはズボラな性格のため諦めた。

さらに、締め付けが強い下着だと肌が痒くなりやすいので、アラサーにして綿のパンツを愛用している。セクシーな下着に憧れて穿いていた若かりし日はすでに遠く、いまではプチプラで手に入る綿パンツのなかでも、好きなキャラクターの柄が入ったものを好んで買っている。

下着姿はまるで幼稚園児。でもいいの、誰に見せるわけでもないから。私が快適で、かわいいの穿いてるからいいの。サンリオ柄のパンツで快適にお股を守っていても、生理痛がひどく、夜も眠れず朝も起きられないことがある。そんなときは仕事を休みたいと思うし、「生理休暇があるんだから堂々と使わせてよ」と文句を言いたくなる。

生理について声を上げた勇敢な女性たちのおかげで、今の私たちがいる

男女雇用機会均等法を考えるうえで争点にもなる“生理”という女性特有の生理現象を、私が意識するようになったのは、つい3~4年ほど前だ。

「生理が恥ずかしい」「PMS」「月経カップ」「低容量(低用量)ピル」「生理用品のための出費が負担」など、ネットの記事やSNSで目立つようになってから、私は自分の子宮について考え始めた。そして、他人の子宮についても。

自分の体を知り、新たな知識を得るだけでなく、“生理”という存在を発語し続ける。声を上げた勇敢な女性たちのおかげで、私は生理休暇のある職場に働けており、「生理で体調が悪い」と私生活でも職場でもちゃんと伝えられる。陰部が痒くなったら、すぐ通いの皮膚科にも言える。

そういうものだと思って意識することもなかったいままでの私は、無知で、環境に恵まれてもいたのだろう。

快適に生活するために「自分の体」を知り、身近な人に共有しよう

不調を感じれば、「そろそろ生理だからなのもあるな」と当りをつけられる。なんとなく不調なのも生理前から生理中のブルー期のせいだということにして、心身を労って美味しいもの食べちゃおうとか、家事は手抜きにしようと切り替えられる。これから生理が終わればキラキラ期が待っているから、そしたら筋トレだ! と、子宮を中心にセルフケアすることもある。

より快適に生活するために、私は自分の体を知り、調べ、身近な人に共有する。私が生理だと知った夫は、「おなか痛くない?大丈夫?」と心配をかけてくれる。私は「大丈夫、今回はあまり痛まないみたい」と返した。

生理痛がひどくなるのは出血があった日の夜が多いので、そのときは夫に腹をあたためてもらう。体温の高い大きな手で包んでもらうと、痛みが和らぐのだ。コミュニケーションのひとつにもなると思い、付き合ってすぐにお願いし、恒例となった。この“子宮あたためハグ”も、ジェンダーを考える情報サイトから入手したアイデアだ。

デリケートな私の体よ、労ってあげるから、精一杯生き抜いておくれ。