人生の宝物になった先生との出会い。彼女のような生き方を私もしたい

「母とはこうあるべき」、「女性とはこうあるべき」そんなステレオタイプに一切はまらず、多彩な顔を持ちながら自分軸に生きる彼女。
その出会いは私の価値観を大きく揺さぶった。
彼女と出会えたことは、私の26年間の人生のなかでもっとも幸運な出来事の1つである。なぜなら、それまで夢がなかった自分に「英語を勉強して海外へ行ってみたい」という初めての夢を見つけるきっかけをくれたからだ。
彼女の名前をここでは、T先生と呼ぼう。
T先生との出会いは、今から13年前までさかのぼる。
小学校を卒業した3月。私は母ととあるお宅でやっている英語塾の体験教室に向かった。
玄関のチャイムを押すと、「こんにちは!今日の体験教室を受ける青月さんね!」。
明るく、満面の笑顔ではきはきと話すT先生が迎えに出てきた。
この出会いが、未来の自分に大きな影響を与えるとはそのときは思いもしなかった。
体験教室で初めて学ぶ英語は、日本語とは、異なる文法や語彙が多く、最初はまったく理解ができなかった。
しかし、「英語は1日では身につかない。コツコツと学ぶことで視野を広げてくれるのよ」というT先生の言葉に心が動いた。
「英語を学んだら、何かが変わるかもしれない」。そして、このT先生に英語を教えてもらいたいと思ったのである。
体験授業が終わり、自宅に戻った私は迷うことなく母に、「T先生の英語塾に通いたい」と伝えた。
そして、中学1年生になった4月から英語漬けの日々がスタートした。
T先生の授業は正直にいうと大変だった。
宿題は大量にでるし、授業前には英語でスピーチするルールだったため、内容を考えないといけなかったからだ。
英語のスピーチで少し間違えるだけで「もう一度やってみよう」と言われ、完璧になるまでやり直しになった。
さらに、私が通っていた中学校は宿題が大量にでたため、毎日が宿題地獄だった。
大変な日々だったが、私が英語塾をやめなかったのは、T先生が授業中に話してくれる海外の話が好きだったからである。
特に思い出に残っているのは、T先生が大学生の頃にオーストラリアへ留学した話である。
現地のホストファミリーは優しくしてくれたこと、現地のスーパーにカンガルーの肉やジャーキーが売られていたことなど、オーストラリアのいろいろな話をしてくれた。
先生の話は私の価値観を大きく変えていく。「日本の外にも面白い世界が広がっている」、「英語を勉強したら、海外へ行ける」という思いが芽生えた。
そして、いつの間にか「海外へ行ってみたい」という夢を持つようになった。海外へ行くという夢が私の英語を頑張る原動力だった。
また、T先生の英語のレッスンを受けるうちに、彼女には「英語塾の先生」という顔以外もあることを知っていく。
T先生にはお子さんがいらっしゃるので、「母」としての顔。
また、地元の中学生にテニスを教える「テニスコーチ」の顔、さらには、趣味でフラダンスを踊っているので、「フラダンサー」の顔などT先生には4つの顔があったのだ。もしかしたら、私が知らない顔もあったのかもしれない。
彼女の自分軸で生きる姿に私も「こんな大人になりたい」と思うようになった。
T先生の英語塾は中学校を卒業するまで通った。入塾当初は、まったく理解ができなかった英語が英検3級に合格できるまで成長した。
本当は高校生になってからも継続したかったが、T先生の英語塾は中学生までしか生徒を募集していなかった。
最後の授業の日にT先生から言われた言葉がある。
「青月ちゃんの英語力はすごく成長したね!海外に行く夢叶えてね!」。
彼女は初めて会った時のように満面の笑みで話し、最後の授業は終わった。
英語塾を卒業して5年後、私は念願だった「海外に行く」という夢を叶えた。
しかも、行先はT先生と同じオーストラリアである。
T先生との出会いがなければ、オーストラリアに行くこともなかっただろう。
彼女のようにステレオタイプにはまらない生き方を私もしていきたい。
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