昔好きだった人の名前を検索をかけてみたことがある。

名前なんてそもそも出てこない、または何かの地区大会で優勝している(部活動等に所属していた場合)、社会人になって企業をしている、何か有名な賞をとっている(このケースはめったにない)様々な方法で、昔のあの人を手繰り寄せようとすることができるのは、このSNS時代の特権だと私はひそかに思っている。

だが、まさかその昔好きだった彼がホストになっていたという事実を突きつけられた経験がある人は、めったにいないだろう。

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そう、私が昔猛烈に恋をしていた彼は、ホストになって芸名すらも持っていた……。
私は高校三年間、彼のことが猛烈に好きだったということは過去のエッセイで数々書いてきた。あか抜けないところが好きだとか、私にだけ見せる笑顔がずるいだとか、失敗を笑いに変えてくれてありがとうだとか、臭いセリフを当時の日記帳からそのまま掻い摘んでは赤裸々にこのサイトに書き綴ってきた。ホストになっちゃったんだって、彼。

高校時代はもう約10年も前の話。だから、もうとっくに過去の話なんだけどね。私ももうこの春結婚をしたし、家庭も持った。仕事も順調だし、毎日家に帰るのが楽しくて充実している。

だけど、1年前の春、何かに呼び寄せられるかの様に大阪に一人旅に行ったの。別に大阪で何かイベントがあったわけでもなければ、訪れたい場所があったわけでもない。ほんの出来心で、一人旅に大阪を選んだのは私だった。だけど今思うと、彼が大阪ミナミのホストになったという情報を得ていたからこそ、その場所を選んだ気がする。たぶん、ううん、絶対。

会うつもりはなかった。会えるわけもないし、連絡先ももう知らない。(本当は知っているけど、一生未読無視されている一文が残ったまま)

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「久しぶりに電話できる?」

もう友達として、あの日々はもう過ぎ去った過去として純粋無垢に声が聴きたい。そう思って送った一つの吹き出しには一生既読マークがつかない。スタンプはプレゼントできる。だから、ブロックはされていない。トプ画は時々変わる。どうやら生きてはいるみたい。

彼の名前をフルネームで検索かけて、色々な関連から探ったんだっけ、そしたらどんぴしゃり。君はホストになっていた!ああびっくり、だって、その宣材写真は当時の面影を残したまま、あの時よりも輪郭がしゅっとして、顔はなんだかさらに小さくなった?隠し切れないスタイルの良さは学生時代から健在で、さらにかっこよくなった?

一人旅の夜、ネオン街を一人歩いた。多分あのあたり、近づけないけど夜の街の片隅に君は生きてるんだろうな。道頓堀の真ん中で、会えるわけもない君を願った。
私、なんでこんなところまで来ちゃったんだろう。胸の中にいる君はまだあどけなくて、本当はとてもやさしい性格なのを私は知っていたんだよ。
本当の君を隠して、自分を強く見せなくていいから、もう一度、まっすぐな会話をしたい。
こんなことがあったね、あの時はこんなことを思っていたんだよって、たくさん本音で話せたらどれだけ楽しいのだろうか。もう一度、本当は会いたい。だけど、もうきっと二度と会うことはない君へ、自分らしく、あなたらしく輝ける場所に今いることを、願っているよ。