特別な朝を迎えるために、白湯でほっとひと息。「なんとかなるさ」

化粧水、乳液をジップロックに入れ、スーツケースの中にしまう。
化粧水よし、衣服よし、下着類よし、ブラシよし、これで、明日の準備が整った。
スーツケースのファスナーを閉め、自宅の玄関にそっと置く。
今年の4月11日の21時。荷造りを終えた私は、烏龍茶を一口すすりながらホット一息ついていた。明日の4月12日の朝、名古屋駅から新幹線に乗り、東京へ旅立つ。
東京へ行く理由は、自分の人生を変えるために行動している仲間に会うためだ。
私が仲間に出会ったのは、26歳になったばかりの昨年の9月。あるキャリアスクールに入会したことがきっかけである。
入会した理由は、今の雇用形態で働き続けるのは将来的にリスクがあり、キャリアチェンジをしたいと思ったからだ。現在の職場は、尊敬できる上司や同僚が多く、恵まれている環境だと感じている。
しかし、私の雇用形態は非正規雇用。いつ仕事を失うのか分からない不安が常にある。
実際に今の雇用形態になり、現在の職場で3社目。過去の2社は会社都合でわずか5カ月間で労働契約が打ち切られてしまった。
その経験から、雇用形態に縛られない生き方をしたいと願うようになった。
キャリアスクールに入会して、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと出会った。SNSで繋がり、ビデオ通話アプリを使用して、自分の叶えたい理想やスキルの学び方について話し合った。
何度も、仲間たちと話すうちにある思いが生まれる。それは、「オンラインではなく、現実の世界で仲間と会ってみたい」と。
その思いが叶うきっかけは、今年の2月にキャリアスクールの公式SNSが投稿したあるイベント情報を見たことだ。
イベントの告知文には「すべての受講生のがんばりをお祝いする祭典」と書かれていた。
場所は東京。最初は行こうか迷った。なぜなら、誰1人知り合いがいなかったらどうしようと思ったからだ。
1人参加が不安だった私は、「イベントに現地参加するか迷っている」とSNSに投稿した。
すると、複数人から「私も、現地参加するから会おう!」というメッセージが届いた。
私は、「1人じゃない。しかも、実際に会って話せるのは、このイベントで最初で最後かもしれない」と思い、参加を決めた。
烏龍茶を飲み干し、気がついたら、時計の針は22時を過ぎていた。新幹線に乗り遅れたら大変だと思い、歯磨きを済ませ、布団のなかに入った。
目をつぶり、呼吸を整える。いつもなら、布団に入ればすぐに寝られるのに、今夜はなかなか寝れない。時間だけが静かに過ぎていく。
時計を見ると、いつの間にか23時になっていた。
寝る前に飲んだ烏龍茶に含まれるカフェインが効いているのか。
それとも、「仲間に会える楽しみな気持ちと人見知りをしないか不安な気持ち」が心と体をざわつかせているのかもしれない。
まるで、学生時代に修学旅行が楽しみすぎて寝られなかったように。
心のなかでは、「早く寝たい」と思っているが、体はいうことを聞いてくれない。
このままでは、寝不足になり、明日に響いてしまう。そう思った私は、布団から出て、キッチンへ向かった。
マグカップに水を注ぎ、レンジでチンする。レンジからマグカップを取り出し、白湯を一口飲む。白湯には、寝つきをよくする効果があるとネット記事で読んだことがある。白湯を飲んでいくうちに、温かさがゆっくりと身体の奥まで染み渡る。
すると、さっきまで興奮していた心と体が自然とほぐれていった。
マグカップを洗い、棚にしまって部屋に戻った。
再び、布団のなかに入り、深呼吸をする。
「大丈夫。明日はなんとかなるさ」そう自分に言い聞かせる。
いつの間にか、ざわついていた気持ちが静かになっていた。少しずつ、意識が遠のいていく。そして、私は深い眠りに落ちた。
特別な朝を迎えるために。
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