もう会うことはきっとない。それでも3年分のLINEはまだ消せない

「急にLINEの履歴を見たくなったり、駅で似た背中を見かけたり。会えない日々が続いても、心のどこかにずっといるあの人のこと」
エッセイ募集のこの文章を読んですぐ、頭に浮かんだ人がいる。その人について書こうとしたことは前にもあったが、なんだか上手く書けなくてやめてしまった。今日は、そのリベンジをしようと思う。
その人とは、高校生の時に出会った。会ってすぐに、すごく気が合うような気がした。帰りのバスも一緒だったので、2人でたくさん喋った。初対面の人とこんなに話せたことは初めてだった。時間があっという間に過ぎていった。
交換していたけどなかなか動き出さなかったLINE。私から勇気を出して始めてみたら、たわいない話で盛り上がった。日常の写真を送りあったり、趣味について話したり。たまに将来の夢や進路について語り合ったりもした。考え方が似ていて相談しやすかったし、互いに励ましあって頑張れていた。お互い忙しくて返信が遅かったけど、待ってる時間も楽しかった。
その人がひとつ年上だったし頭も良かったので、時々勉強を教えてもらっていた。手書きの字も、ノートのまとめ方も、綺麗だった。「また何かあったらいつでも言って」という優しい言葉に甘えて、色々聞いていた。ひとつ上なだけなのにすごく大人に見えて、同級生が子供っぽく見えるようになった。
学校が違うから会うのは年に1、2回。LINEの返信だって、2日に1回くらいだった。だから、「付き合わないの?」と友達に言われても、そんなのじゃないよ、と返していた。ただ私が尊敬してるだけ。だって、向こうが私と付き合ったってなんのメリットもないじゃん。半分くらいは自分への言い聞かせだったかもだけど。それでも、LINEは超スローペースでも続いていたし、会った時はまた楽しく話していた。
私の大学受験が終わった春、1回だけ2人で会った。合格祝いと言ってご飯も奢ってくれた。その時もたくさん話して、気づいたら外が暗くなってた。楽しかった。
その1ヶ月くらい後、いつものようにLINEで話してたら、突然、「俺、彼女できたんよね」って。
びっくりした。この前会ったのに。あんなに優しかったのに。なんの関係も持ってなかったくせに、衝撃と怒りにも似た気持ちが溢れそうになった。電車に乗ってる時で良かったと思った。
でも、彼を責めるのも違う気がした。第一、責めるといっても何を責めるのか。「じゃあ、もう連絡しない方がいいよね」
また何かあったら聞いていいよ、と彼は言ったが、それもどうかと思い断った。そして、せいいっぱいの強がりで、幸せを願っておいた。
大学は遠く離れているし地元も違うから、もう会うことはないだろう。それなのに、約3年分のLINEの履歴は、まだ消せない。
でも、もう、会っても言うことは何もないかな。初対面の人とは普通に話せるようになったし、勉強を教えてくれる友達もできた。あの時の私には必要な人だったけど、私だってあれから成長した。
念のため言っておくと、今の私の生活は充実している。恋愛をする余裕がないくらい、十分に。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。