彼とは高校一年生で出会った。
極度に人見知りで引っ込み思案だった私は、知らない人ばかりの高校に入学してから、全く友達ができなかった。
そんな中、席が近くだった三人の男子がよく話しかけてくれた。そのうちの一人が彼だった。

◎          ◎

彼は私と趣味が合った。あまり同世代が見ていないマイナーなアニメを、彼は見ていた。彼とアニメの話をするのも楽しかったし、男子達と話している時間は楽しかった、
それなのに、私は次第に男子達と距離を置くようになった女友達がいないのに男子と仲良くすることで、女子から良く思われないのではないかと危惧したからだ。

二年生になり、彼とは別のクラスになった。そのうちに、彼が退学したという噂を聞いた。それから彼と会うことはなかった。

高校を卒業してからも、時々彼のことを思い出しては後悔していた。退学してしまってはもう話す機会はない。連絡先も知らなかった。普通に仲良くしていればよかった。もう一度会って、もっと話したい。そう思っていた。

◎          ◎

彼のことが心に引っ掛かったまま、ごくたまに思い出す存在となっていたある日のことだった。SNSのおすすめユーザーに、彼の名前を見つけた。

もう二度と話すことも、連絡することもないと思っていた。その彼の名前を見て、心臓が大きく脈打った。
恐る恐るプロフィールを開くと、承認なしで投稿を見ることができた。写真を見る。間違いなく彼だった。
しかしフォローする勇気はなかった。投稿を見た履歴だけを残した。

するとその履歴を見たのか、なんと彼の方から私のSNSにフォローの申請が来た。そこから彼とやり取りをするようになり、とんとん拍子で会うことになった。
久しぶりに会った彼は、あの頃と変わらなかった。高校では複数人で話すことが話すことが多かったので、二人で話すことにどこか気恥ずかしさを感じながらも、会っていなかった期間を埋めるかのように話は弾んだ。

すぐに二回目も会うことになり、二人で居酒屋に行った。
ほろ酔いの頬を冷やすように、夜風の涼しい春の夜のことだった。
二人並んで駅へ向かう道中、彼はふと足を止めた。

「今言うことじゃないかもしれないけど……俺と付き合ってもらえませんか?」

かくして、私たちの交際は始まった。

◎          ◎

だが交際を始めてから二週間後に別れた。彼の女性恐怖症が再発したと言うからだ。
彼の話では、元カノに浮気など酷いことをいろいろされて、女性恐怖症になったと言う。その後治療の結果治ったと思っていたが、私と付き合ったことで再発したらしい。

今思えば、こんな嘘臭い話はない。彼の思考としては、酔った勢いで可愛く見えたが付き合うほどじゃなかった、一度体を重ねればこれ以上はいいや。こんなところだろう。

当時の私は本気で信じ、泣いた。お互い好きなのに別れなくてはならないと思い、苦しんだ。友達や先輩に話しているうち、みんなが私の目を覚ましてくれた。

もう一度会えるなら会いたいと願う、夢の中のような存在だった。それが一転して今ややり捨てクズ元カレだ。

会いたい人には会えないくらいが丁度いいのかもしれない。綺麗な思い出で終わらせておけばよかった。