会社は、暮らしの一部になった。
会社って、最初はもっと外のものだと思っていた。生活のために、お金を稼ぐために通う場所で、いわば自分とは切り離された存在。仕事を終えて家に帰ったら、自分の時間が始まる。そんなふうに、オンとオフがきっちり分けられるものだと思っていた。

しかし、新卒で入社して3年が経った今、「会社」という言葉に感じる距離は、昔とまったく違う。

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ここでは、スタッフ同士をキャンプネームというあだ名で呼び合い、こどもたちと一緒にごはんを食べ、畑を耕し、豚やニワトリを家族として飼って、世話をしている。地域の行事には、スタッフみんなで参加し、まるで家族のような温かい雰囲気が漂っている。

職場というより、暮らしの場だ。仕事と「わたし生活」の境目が曖昧になるなんて、最初は想像もしていなかった。でも不思議と、息苦しさよりも心地よさを感じている。

もちろん、最初は暮らしと仕事の区切りをどこに持ってくるかに悩んだし、しんどいこともあった。疲れているときに限って、こどもが「ねえねえ!」と話しかけてきたり、全然予定通りにいかなかったり。

でも、ふとした瞬間に「たのしかった」「ここにきて良かった」「帰りたくない」と言ってくれるこどもの言葉に、本当に報われた気持ちになる。忙しい1日の終わりに、スタッフ同士で「おつかれさまでした!」と声をかけ合えることが、なんだか心にしみる。

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でも、近いからこそ抜け出したくなることもある。仕事と「わたし生活」が溶け合うと、休む時間と働く時間の境界がなくなり、自分が疲れきってしまう瞬間がある。少し距離を取りたくなる、何も考えずに1人になりたくなるときもある。

そんな時にこそ、リセットするための時間が必要だと感じる。たとえ一時的にでも、心の中で自分だけの時間を持てる場所が大切だ。

「会社」と聞くと、冷たいイメージや、上下関係の厳しさ、数字に追われる日々を想像する人も多いかもしれない。でもわたしにとっての「会社」は、もっとあたたかくて、人間らしい場所。泣いたり笑ったり、悩んだり喜んだりできる場所だ。

毎日顔を合わせるスタッフたちは、もはや家族のような存在。というより、会社のコミュニティがファミリーのようなものだ。ときには意見がぶつかることもあるけれど、それでも一緒に前を向こうとする人たち、なんとか前に進もうとする人たちと働けることに、わたしは日々救われている。

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「会社」との距離感は、人それぞれだと思う。だからこそ、自分にとって心地いい距離の取り方や関わり方を選べるようになりたい。

わたしは、今のこの近さが好きだ。そして、そんな場所で働きながら、日々の仕事を通じて少しずつ自分も成長できている気がする。仕事と暮らしが溶け合い、そこにあるのは、数字や成果だけでは測れない、もっと大切な何かがあるように思う。

これからも、会社の中で暮らしながら、自分のペースでこの距離感を大切にしていきたい。わたしにとって、「会社」はただの仕事の場所ではなく、心を寄せ合い、助け合う場所であり続けるだろう。