初任給の通帳の数字は、これまでの道のりが報われたという努力の証

「最近うれしかったことは?」と聞かれたら、迷わずこう答えます。初任給が、これまでの人生で銀行口座に貯まっていた最高金額を超えたこと!
一見、なんて現金な話だろうと思われるかもしれません。でも、この出来事は、わたしにとって衝撃的でした。長かった学生生活が終わり、社会人として一歩を踏み出した。その確かな実感を、通帳の数字が教えてくれました。
今年の四月、わたしは小学校の教員として働き始めました。初任という言葉の響きに、少しの不安と大きな期待を胸に、桜が舞う校門をくぐりました。子どもたちの元気な笑い声、先輩の先生方のあたたかいまなざし、教室に貼られた掲示物の一つひとつに、学校という空間が生きていることを感じました。
何もかもが手探りで、目の前のことに夢中になる毎日。給食の準備、朝の会の進行、ちょっとしたけんかの仲裁。どれも陰でこんなにも時間と労力をかけて準備をしていたんだな、とかつてのわたしの恩師に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
子どもたちと過ごす一日は、あっという間に過ぎていきます。
そして今日、初任給が振り込まれたという通知が届きました。わたしは少しドキドキしながら、スマートフォンのアプリで口座残高を確認しました。
そして、画面に表示された金額を見て、思わず「うわっ」と声をあげてしまいました。
ああ、自分は働いたんだ。頑張ったんだ。社会人として一歩を踏み出せたんだ。
そんな気持ちが、じわじわと胸に広がっていきました。
決して大金ではありません。でも、学生時代にアルバイトでこつこつ貯めてきた金額を、たった一か月で超えたことは、わたしにとって大きかった。
時間と労力をかけて学び、経験を積んできたことが、こうして「価値」として形になったこと。それが何よりもうれしかったのです。
正直に言えば、教員という仕事は楽なものではありません。業務は多く、子どもたち一人ひとりと真剣に向き合うには、体力も心も使います。でも、不思議と「ブラックだ」と感じたことはありません。
なぜなら、毎日が新鮮だからです。子どもたちの何気ない一言に笑わされたり、時には泣きたくなるほどの葛藤があったり。でも、そのすべてが「生きている」という実感につながっています。
そして何より、子どもたちの「できた!」という瞬間に立ち会えること。これはお金では代えられない、教員という仕事のご褒美です。
初任給の喜びは、わたしにとってのスタートラインです。この数字に甘んじることなく、これからも自分を磨き、成長し続けたいと思っています。
嬉しかった理由は、金額そのものではなく、「ここまで歩いてきた道のり」がひとつ報われたように感じたから。通帳に並んだ数字は、わたしの努力のひとつの証。これからまた、新たな数字が、そして新たな喜びが、積み重なっていくことを楽しみにしています。
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