アイドルファンのオタク友達は強い。好きはポジティブな強さをくれる

最初から「オタク同士」として出会った友人が何人かいる。同じアイドルグループのファンだから、というたった一つしか見えてない共通点を突破口に仲良くなったひとたち。遠方に住んでいることも多く、会話はもっぱらDMや電話で、直接会うのは数年に一回の人もいる。たくさんの人と出会ってきたけれど、わたしの知る彼女たちはみんな「強い」。
先日、その中のひとりとライブに参加してきた。
テレビ電話は何度もしてきたものの、初めて直接会ったその子は、DMや電話での印象より身長が高かった。思っていたよりもとってもよく食べる子で(白米が大好きだと言っておかわりまでしていた)、笑ったときの声が大きくて、歴代で一番重いと噂されるペンライトを片手に2本同時に持って振っていた。
熱狂的なファンってこういう人のことを指すのだろうと微笑ましくなるくらい、よく笑い、よく泣き、本当に幸せそうにライブを楽しんでいた。隣にいてライブを楽しめているだけでとても幸せになった。
アンコールの掛け声を始める前、どちらからともなく目を合わせて「せーの、」と呼吸を合わせてから叫び始められたときなんて、魂の形が合うオタクだ!と柄にもなくアツい気持ちになった。
ライブの会場から最寄り駅までは結構歩かなくてはいけなくて、2人とも興奮冷めやらぬ中、夜道を歩いた。話しているうちにお互いがお互いをもっとおとなしいタイプだと思っていたとわかって面映ゆかった。
今までプライベートに踏み込んだ話はあまりしてこなかったけれど、2人ともいわゆる体育会系的な風土の業界に就職することが決まっていて、そういう流れを汲んだ教育を受けてきていた。直接会うまで猫を被っていたわけではないけれど、見せたい自分を慎重に選んで見せていたようにも思う。
「文面とか電話のあの感じでいつもいたら、わたしたちやってられないよね!」と笑い合ったあの夜はほろ苦くも眩しくもあって、そしてたしかに最高に楽しかった。からっと笑うその子は、人生を楽しむためにしなやかで強い。
別のオタク2人と飲みに出かけたこともあった。
2人ともわたしより4つ年上で、当時もよきお姉さんたちとして慕っていた。その2人もよく食べよく飲む人たちで、沖縄料理屋でジーマーミ豆腐をもちもちと食べながら2人の熱い語りを聴いている時間は楽しかった。2人の話を聞いていると、好きって人によって形が違うけれど、だからこそ面白いと心の底から思えた。
帰り道、酔っ払った大学生数人に3人まとめてナンパされた。最悪だ、と思った。
「誰が一番かっこいいと思う?」と聞かれたのを睨みつけて無視しようとしたその時、1人が高らかに言ったのだ。「わたしたち全員大好きなアイドルがいるから!そのひとが一番かっこいいに決まってる!」と。走ろう、と手を引かれて訳もわからず走ってその場から去った。途中から3人とも笑っていた。
わたしたちは強い、と人生で一番無邪気に信じられた時間だった。自分だけの形をした好きを誰かと共有して、それを支えに強くなれることを教えてくれた夜だった。
他の人たちともそれぞれに思い出があって、みんなそれぞれに「強い」。そのことに想いを馳せるたびに、好きという気持ちがくれるポジティブな強さを愛おしく思う。あの夜たちは、夜だけどとてつもなく眩しかった。
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