自分で言うのもなんだが、寝るのは得意なタイプだ。いつでもどこでも寝られる。

というよりもむしろ、夜になると眠気に耐えられないので、学校の修学旅行で「皆で朝までお喋りしようよ〜」なんて楽しくおしゃべりしていても、いつも決まって一番最初に寝てしまうといった具合で、徹夜もしたことが無かった。

それと同時に、徹夜なんてしてしまったら翌日どうなってしまうんだろうか、夜に寝ないなんて考えられないと、朝が来るまで寝ずに起きていることを少し怖いとさえ思っていた。

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学生時代の部活の顧問がよく、仕事に部活の顧問にと日々を超多忙に過ごす自分の生活を笑い話にしながら、「みんな知ってるか?夜と朝は繋がってるんだぞ。今の季節は朝5時を過ぎると鳥のさえずりが聞こえ始めて空が白んでくるんだ」なんて話をしていた。

「そんなのもちろん知ってますよ〜」と笑い飛ばしている同期もいた。確かに中高生の頃、一部のクラスメイトは試験勉強の為に徹夜をしていると話していたので、きっとそうやって鳥のさえずりが聞こえて空が白んでくる様子を知っているのだろう。

しかし、夜通し起きていたことのない私はそんなの知らない次元の話で、苦笑いをするのが精一杯だった。

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大学の夏休み、友人と一緒にずっと憧れていたヨーロッパ旅行に出かけることが決まった。
日本との時差は約8時間。それまで学校のプログラムで参加した海外ホームステイや旅行などでは、こんなに日本と時差のあるところに行ったことがなかった。

ガイドブックや旅行好きな人のブログを読むと、どうやって時差ボケを回避するのが良いかといった情報が載っている。折角の旅行だからと、目的地に到着してすぐに時差ボケで観光できないなんてことは絶対に避けたいので私たちは時差ボケ対策の情報を収集して臨んだ。

待ちに待ったヨーロッパ旅行、往路の時差ボケ対策は大成功。よくある方法だが、日本を出発する前に目的地の時刻に時計を調整し、現地の時間に合わせて航空機内の睡眠時間を過ごすといったものだ。

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しかし問題は帰路だった。正直こちらは到着後にスケジュールを詰めているわけではなかったので気が緩んだのだと思うが、本来寝るつもりでなかった時間に寝てしまい、それも機内食の声掛けに気付かないほどの爆睡、到着が日本時間の夕刻だったにもかかわらずスッキリ目が覚めてしまったのだ。

その後自宅に帰り布団に入るも、もちろん眠気は来ず、そのまま気付いたら鳥のさえずりが聞こえてきて、カーテン越しでも空がだんだん白んでくるのが分かった。
ああ、やらかした。
それからというもの、約1週間ほど昼夜逆転の生活を続けた後にどうにか夜に眠るリズムを取り戻した。

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1度経験さえしてしまえば、2回目以降はなんてことない。これを機に私は寝ずに朝を迎えることがすっかり怖くなくなってしまった。
時には友人と朝まで飲み明かし、また仕事が忙しくて気付いたら明け方になっていた、なんてこともあったりした。とはいえ身体にも精神にも良くはないので、これからも徹夜は程々にしよう。