もう一度会えるなら、父方の祖母、つまり私のおばあちゃんに会いたい。会って、「好きなことを見つけて、やりたいことに向かっているんだよ」と伝えたい。

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おばあちゃんは去年の11月、病気の手術を受けたあとに肺炎を併発し、帰らぬ人となった。手術が終われば、またいつもの日常に戻ると思っていたから、家族みんなあまり深く心配していなかった。私も、そう思っていた。けれど、術後に容体が急変して何ヶ月も入院してそのままだった。思い返すと、もうほとんど会話もできなくなっていたからちゃんと話せた記憶がほとんどない。

おばあちゃんはかなりの心配性だった。父も母も、時には少しうんざりしているように見えたし、私も正直、忙しいときは話を聞くのがしんどく感じることもあった。だけど、一人暮らしだったおばあちゃんが気になって、数ヶ月に一度はご飯に誘っていた。上大岡駅のパン食べ放題や「おぼんdeごはん」で一緒に食事した時間は、今では大切な思い出だ。

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私が「好きなこと」「やりたいこと」を見つけようと思ったのは、おばあちゃんの一言がきっかけだった。お正月に一緒にご飯を食べたあと、おばあちゃんからLINEで届いた「一生懸命やって、新しい道を見つけてね」という言葉。その時、なぜか胸に響いた。そろそろ自分の興味あることと向き合わなきゃ、きっと仕事も続かない。転職ばかりしてきた自分を見て、きっとおばあちゃんも心配していたんだろうな、とそのとき思った。ごめんなさい。

それから私は、空間デザインを学ぶために専門学校に入った。昔から「空間」への関心が強かったのもあり、毎日図面を描いたり、素材を学んだりして過ごした。無事に今年の春、卒業することができた。これも全部、おばあちゃんの応援があったからだと思う。そして、その経験を経て、今年の5月から、自分が興味を持てる業界で働ける会社に内定をもらうことができた。ここなら頑張りたい、そう思える会社だ。初めてそう思えるところに出会えた。

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おばあちゃんは頭のいい人で、日本語教師の資格を持ち、油絵も習い、いくつもの挑戦を重ねてきた人だったと、葬儀のときに知った。もっといろんな話、聞きたかった。もっと早く知っていたら、もっといろんなことを共有できたのにと思った。小さい頃、誕生日にくれた図書カード。本当はおもちゃとかが欲しかった。今ならすごくありがたいなと思える。あとは囲碁を教えてくれた。対して続かなかったけどなんか共通点ができて嬉しかった。それに、初めて買った漫画は囲碁がテーマの「ヒカルの碁」。今もタンスにそっとしまってる。そんな小さな思い出たちが、蘇る。

大学受験のとき、私は世間的に見て「いい大学」には行けなかった。だからおばあちゃんに対して申し訳なくて、何度も謝った。でもおばあちゃんは、「納得して選んだのならいいんだよ、なんで謝るの」と言ってくれた。そのとき、すごく肩の荷が下りた。本当は、ちゃんと「ありがとう」って言いたかった。

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今、もし会えるなら、「おかげで自分のやりたいことが見つかって、それに向かって頑張ってるよ」と伝えたい。そして、「おばあちゃんが若い頃にして楽しかったこと」「挑戦してきたこと」、それをたくさん聞きたい。

きっと今の私にある“何でも挑戦してみよう!”という気持ちは、おばあちゃんから受け継いだもの。直接伝えることはもうできないけど、心の中ではずっと話しかけている。LINEだって、返信がないのは分かっているけど、送っている。
大好きなおばあちゃんへ。本当にありがとう。これからも、見守っていてね。