自然豊かな田舎で過ごす老後への憧れと、超高齢化社会という現実

叶うか叶わないかは置いておいて、現時点での理想の将来の生活は、たまにキャンピングカーで全国へ出かけながらも、拠点は自然豊かな田舎がいい。小さな平屋の一軒家と、少しの家庭菜園と花壇、ガレージなんかを置いてのんびり暮らしたい。
近代的な街並みはたまにだから楽しい。
高校生くらいの頃から、数ヶ月に一度、1〜2日くらいで東京へ遊びに行っていた。行きたい場所をあらかた決めて行くわけだから楽しいに決まってる。そして全力で1日を楽しんで、歩き回った結果、へとへとになって帰ってくる。
それはそれで楽しい思い出なのだけど、私にとっては都会はイベントで行って、疲れて家に帰ってくる、そんな場所。
きっと一番住みやすいのは、地方都市。現実的に老後の生活を考えると、最終的には都会のアパートやマンションがいいのだろう。
しかし、私は都会では暮らせないと思っている。
それを痛感したのは、就職活動時に週に数回乗った満員電車。人混みがそもそも得意ではない私、人の目が気になる私には辛かった。
ただでさえ1日中慣れないヒールを履いて歩き回り、どれだけ疲れていても、痛くても、座れるかどうかは運次第。昔から自分であまりガツガツ行けるタイプでもなかったため、少し自分が不利な立ち位置でも絶対に座ってやろうという気持ちにもなれない。
満員すぎて、ホームから乗り込む時に、足を置く隙間もない出入り口付近が先までずっと続いている。そんな光景を見ると、そこに突っ込んでいく勇気も出なくて、もうすぐ発車するというのに、出来るだけ隙間が空いている出入り口を探して先まで走った。
都会は人も情報量も多過ぎて、疲れてしまう。
人混みが苦手なのは、生まれ育った場所が自然豊かな田舎だからだろうか。
楽しくもあるのだけど、電車に乗ると人間観察が止まらない。となると、次々と人々の情報が流れてくる。イヤホンもせずに剥き出しの耳はダンボのようになり、他人の話につい聞き入ってしまって、他人事なのに笑ってしまったり、嫌悪感を抱いたり忙しい。頭が常にフル回転で休まる暇がない。
私は人と仲が良くなると、無駄に物理的な距離感が近くなってしまうらしい。一方で、苦手な人や嫌いな人とは距離を置きたくなる。人見知りで心を開くまでに時間のかかる私。
だからか、見ず知らずの人、生理的に無理な人と必然的に接触し、時に無理やり進まなければならない人混みは大の苦手。他人や周囲の環境に容易に影響されてしまう私。他人の嫌な態度、話が聞こえてきてしまうと、気持ちがそちらに引きずられてしまう。
たまに聞く。都会も慣れると、むしろ色々な人がいるのが当たり前で、他人に干渉しないから楽とか。確かにそうなのかもしれない。田舎に住んでいると、良くも悪くも他人と違うことをすれば目立ってしまうし、噂も一瞬で広まる。いらぬおせっかいに、凝り固まった偏見や風習、そういった嫌な面もたくさんみてきた。
だからか、田舎で自然に囲まれた場所に住みたいとは思うけれど、実家のある田舎に住みたいとは思わない。実際、あまりいい思い出のない高校生活を終え、留学し、帰国したあと、私が進んだのは県外の大学だった。自分を知る人のいない場所に行きたかった。
何でもかんでも他人やものと比較してしまう私にとっては、おそらく比較対象が少ない方がいい。でも、あまりにも世間の流行りや常識とかけ離れた生活をできるほど私は強くない。 だから、ほどほどの距離感で。1人の時間も好きだし、私には必要。
小さい頃から、自然が身近にあるのが当たり前だった。虫は苦手だけど、工場の煙や車の排気ガスを感じさせない、新鮮な空気をお腹いっぱいに吸い込んで深呼吸。
夏の夜に、庭にべンチをおいて寝転び、空の星を見上げる。日々違う顔を見せてくれる雲や夕焼けを眺めることも好きだった。もう二度と見ることのできない雲や空を、画素数の低いガラケーのカメラで撮った。
そうだ、叶うなら、家から障害物なしに、夕焼けが見える窓も欲しい。
超高齢化社会がますます進んでいる今、そんな理想は叶うのだろうかと、はるか先の未来を想像し悲しくなる時がある。
そもそも生活水準が、自分の家を持てるまで上がっているだろうか。人口が勢いよく減少していき、田舎に住める未来は来るのだろうか。買い物も移動手段も。でも、 ある程度の高齢になってから迎えてくれる賃貸はあるのだろうか、そこで最低限生活できるだけの所得、貯蓄、社会保障、年金はあるのだろうか。生活費という金銭面だけで言えば田舎の方が基本的には安いだろう。
そんな超高齢化社会のジレンマをひしひしと感じながら、それでも自然の中での生活に憧れてやまない。
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