最近の私は、とにかくムカムカしている。今年で22歳になり、周りの友達は就職活動真っ只中。大学の教室もどこかピリピリとした空気に包まれている。

そんな中、私はというと、昨年1年間ロンドンに留学していたため、今は大学3年生として通っている。つまり、みんなよりも2年ほど就職までに猶予があるわけだ。とはいえ、のんびりしている余裕なんてこれっぽっちもない。なぜなら、私は人に笑われるかもしれない夢を抱いているからだ。役者になるという夢を。

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この夢は、中学3年生の時からずっと心の中に秘めてきた。だがこの世界は、本当に厳しい。自主映画やインディーズ映画のオーディションを受けに行くたびに、だいたい3種類の大人に出会う。

ひとつ目は、やたらと持ち上げてきては高額なレッスン料を請求してくる大人。
2つ目は、自分の武勇伝を延々と語り、オーディションの目的すら見失ってしまう大人。
3つ目は、なぜか参加者の欠点を圧迫面接のように突きつけ、最後に甘い言葉でなだめるという、何をしたかったのかわからない大人。

書いているだけでうんざりしてくるが、それでも中には心から尊敬できる大人たちとも出会えた。そして、ありがたいことに少しずつ仕事をいただける機会も増えてきた。

そのひとつが、振袖のモデルの仕事だった。
私自身、成人式は2年前に経験した。当日は母の振袖を着た。正確には、祖母が伯母に買い与えた振袖を、母が引き継ぎ、さらに私が受け継いだものだ。

深緑とベージュを基調にした生地に、鶴や松が舞う柄。ぱっと見は地味かもしれないが、一目で生地の良さがわかる振袖だった。帯も本当に豪華で、前撮りや着付けのとき、周囲の大人たちから「すごいねぇ!」とたくさん褒めてもらった。あのときの誇らしい気持ちは、今でも忘れられない。

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そして今日、また新たに着物のモデルの仕事をさせてもらった。今回は、友達が通う美術専門学校の課題で、「着物に関する広告を作成せよ」というお題に私をモデルとして誘ってくれたのだ。

私は、自分で着付けを覚えていたので、家でピンク色の着物に紺色の袴を合わせ、近所の神社に向かった。

撮影をしていると、ひとりのおばあちゃんが声をかけてくれた。「自分で着付けたの?」と。

ドキリとした。着付けが雑だったかな、怒られるかな、と思いながら「はい」と答えると、そのおばあちゃんは小さく拍手しながら、にっこりと笑って言った。
「ありがとうね。忘れないでくれて」

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その言葉に、胸がポッとじんわり温かくなった。
最近、私はどんな大人にも否定ばかりされてきた。周りと比べて遅れている自分に焦る日々だった。でも、そんな一言で、こんなにも心が救われるなんて思わなかった。

何者になりたいのか、自分が本当に何者なのか、正直まだわからない。でも、今目の前にあることを一つずつ丁寧に取り組み、誠実であり続ければ、きっと何かが見えてくるはずだ。
暗闇の中にいた私の視界に、ほんの少しだけ光が差し込んだ。そんな気がした。