「やばい」結論でも「退職」が自分の幸せに繋がることもある

「一回離れると、やばいんだよね」
誰かの言葉が、今も心に残っています。それは、会社を辞める直前の行動について話していた時に出てきた言葉でした。
新卒で入った会社を辞めると決める1ヶ月前、私はドイツ旅行をしていました。旅行前は、まさかその1ヶ月後に自分が退職を決断するとは、夢にも思っていませんでした。たった6日間の、ただの旅行。キャリアについて考えることになるなんて、全く予想外のことでした。
けれど、旅行中に「会社で働く自分」への違和感が生まれ、さらに旅行後に体調を崩したことにより、期せずして仕事について考えることになりました。誰かの言う「やばい」状況に私は陥りました。仕事から、一度離れてしまったのです。物理的に仕事を離れた私は、自分の人生やキャリアと向き合うことになりました。
なぜ、この仕事をしているのか。この仕事が、誰を幸せにしているのか。そもそも、自分を幸せにしているのか。
普段、忙しさを理由に考えることを放棄していた問いが、目の前に立ちはだかりました。もちろん、すぐには答えなど出ません。小さな"違和感"や"モヤモヤ"が心の中に生まれるだけです。けれど、それらは私が日常に戻ったとしても、しつこく頭の中で騒ぎ立てるようになりました。
本当に、自分はあの会社で働きたいの? 本当は、他にやりたいことがあるんじゃないの? こういう人生の過ごし方に、本当に満足しているの?
これまで聞こえなかった自分の本音が、聞こうとしてこなかった心の声が、急に大音量で聞こえ始めました。こんなことを考えるなんてどうかしている、と初めは思いました。でも、そのうちに私は悟りました。これこそ、私の心の答えだと。
旅行でも、体調不良でも、きっかけは色々あるでしょう。でも、日常から、仕事から離れた時。ふと、我に返った時。その時に感じる違和感は、気のせいではないのだと思います。
「私、いつも何してたんだろう」
車窓を流れていく知らない街を見ながら。一向に進まない家の時計を眺めながら。一度会社から離れて静かに普段の自分を振り返った時に感じる、違和感。悩みながらも出した答え。それは一過性の気の迷いなどでなく、本心が導き出した"正解"だと私は思うのです。
もちろん、その声を無視することもできます。「大人ってこういうものだし」とか、「今から他の道を探すなんて……」と言いたくなる気持ちもよく分かります。ある友人は、こんなことを言っていました。「一度乗ったレールから外れるのって、エネルギーがいるんだよね」と。
そう、自分の本音に従うことは、決して楽なことではありません。違和感やモヤモヤが生まれたとしても、「だって、これまでこうしてきたんだから」と、心が納得しきっていない生活を守る方が、楽なのです。
たとえ「この会社は私の居場所じゃない」と思ったところで、一瞬で転職先が見つかるわけではありません。「別の仕事をしてみたい」と思ったところで、未経験者をポンと採用してくれる会社は、そうないでしょう。それなら、今の職場に、今の仕事にとどまる方が、楽なのです。
でも、今いる会社を中心に生活を回すことも、やがては心と体の疲弊に繋がるというのが私の持論です。だから、それが退職という答えに繋がるとしても、定期的に会社から距離を置くことは重要だと思うのです。
長期の休みの間に、「普段の自分」をどう振り返るか。休み明け、どんな気持ちで目覚め、何を考えながら会社に向かうのか。
もし、「このまま会社から離れていたい」と思うなら、それが答えなのだろうと私は思います。それに逆らって会社に向かうことは、幸せから遠ざかる行為だとも思います。
だからこそ、定期的に会社から離れたい。仕事から離れたい。「やばい」結論を出すことになるとしても、「退職」が自分の幸せに繋がることもあると知った今、私は強くそう思うのです。
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