このプラットフォームでは夢を追いかけるうえで反対されたり理不尽な扱いを受けたりしたエピソードが多くみられる。職場での男女分業意識や家事育児との両立などキャリアの途中でのものが多いが、学生時代に周囲から進路に関して反対を受けた例も多くみられる。

他のかがみすとの方々に比べたら私の経験なんて苦労のくの字にもならないし、人生を制限されたことは幸いまだない。それでも、夢を追うことを反対された経験が全くないわけではなかった。

◎          ◎

まずは中学受験。男女ともに大学進学が珍しい私の地元の村では中学受験なんて概念は存在しない。さらに「女の子は勉強を頑張らなくていい」という考えがまだ残っていた。

中学受験をすると決めたときは祖父母に反対され、合格後も応援してもらえるまで多少の時間を要した。小学校のクラスメイトは保育園から10年以上の付き合いだったが、私だけ受験して違う中学に行ったことで壁ができてしまったように思えた。

次は中学時代。中学受験組とエスカレーター組が半々で混在している学校だったので、勉強への意欲もピンキリだった。医学部進学を見据えて休み時間返上で勉強に励むクラスメイトもいれば、テスト期間以外は勉強しない人もいた。

そんな中で純粋に「国境なき医師団に入りたい」という夢を語るとどうなるか。同志として認めてくれる人が若干名、珍獣を見る目つきが少々、「ネキちゃんならいい医者になれるよ」と応援してくれる人がちらほら。

一方で、「どうせ自己満足だろ」「お前には無理だろ」と一蹴する人たちが数名、反応なし大勢。中学最初の担任との面談では「国境なき医師団ねぇ……」と苦笑に近い反応をされた。この時は誰かに応援されているという感覚はほとんどなかった。

◎          ◎

高校生活、大学受験、そして今の大学生活を経験して、自分がいばらの道を選んでしまったことを痛感する日々である。運よく医学部に入れたはいいものの、学力はきわめて凡人並みでテストをこなすので精いっぱい。果たして自分の思い描いたような医師になれるのか、今はとても将来像を思い描くことはできない。

最初に中学受験に反対した祖父母にしろ、「お前には無理だ」と言って馬鹿にしてきた友人たちにしろ、医師になるまでの高い壁を想像してそう言っていたのであれば、残念ながら彼らは正しい。軽々しく「なれる」なんて言えるような職業じゃなかった。

◎          ◎

20歳を迎え、成人式のために帰省し同窓会で懐かしい人たちに多数会ってきた。中学卒業後会っていなかった当時のクラスメイト達は5年ぶりの再会となった。

人伝手に私の近況を聞いていたのだろうか、多くの同級生が「医学部頑張ってね」と声をかけてくれた。中学最初の面談で苦笑していた元担任は、背がぐんと伸びドレスアップした私に驚きつつも、医学部に入ったことを伝えると喜んでくれた。どういうわけか、当時突っかかってきた人たちは一切同窓会に姿を現さなかった。

小学校から10年間お世話になった公文の先生に会いに行ったときには、先生は感涙しながら抱きしめてくれた。小学校の同窓会では最高学歴として崇められてしまった。

祖父は振袖姿の私と撮ったツーショットを親戚中に見せびらかしているとかいないとか。散歩していたら近所の人たちから「この村から医者が生まれるなんて、びっくりだね」「勉強頑張ってね」と何度も声をかけられた。

◎          ◎

今まで自分のことに精いっぱいで、直接聞こえる声にしか耳を傾けられなかった。けれども、聞こえる声だけが応援じゃなかった。離れていても私のことを覚えていて、応援してくれている人たちがあちこちにいた。

勝手に一人で頑張っているつもりだったけど、実は数えきれない応援に支えられていた。

私の夢はまだ始まったばかりで、医師への道のりは果てしなく遠い。けれども、その道のりを見守っていてくれる人たちがこんなにたくさんいる。夢を応援してもらえることがこんなに幸せなことだったなんて。これはもう、頑張るしかないじゃないか。