会社まで徒歩20分。通勤電車に乗らずに済むこの生活を手放せない

私は今、会社に徒歩で通勤している。
電車でたった1駅先のため、20分ほど歩けば着くからだ。天気が悪い日やよほど時間が無いときは電車に乗るが、歩いている日の方が多い。
これがもう、楽で楽で仕方ない。
元々それ目当てで場所を絞って家を探したのだが、正解だった。
通勤で電車を使う、というのはごくごく当たり前のことだと思うが、それが意外とストレスがかかっていたのだと気づいた。
席に座れるかどうか、自分の荷物が邪魔になっていないか、同じ車両に社内の知っている人がいないだろうか、いたとして声をかけるべきか否か……。
電車に乗ることで発生する考えごとって、実は結構ある。それらをいちいち負担だなんて感じていなかったが、過ぎ去ってみると地味に積み重なっていたのだなと気づいた。
それに、毎日歩くことによって「私ちゃんと運動しているな〜」と思える。実際必要な運動量に足りているのかは分からないが、自己満足にはなる。
一駅分は離れているので、頻繁に会社の人と出くわす、ということもない。
こうなってくるともう、この駅の周辺から動けない。会社から見て逆側に一駅ずれた場合、街中になるので家賃が上がるし住宅の数も減る。利便性を保つとすると今の駅のあたりにしか住めないのである。
人間というのは、楽になる変化にはすぐに慣れるが苦しくなる変化にはなかなか慣れない。もし他の駅周辺に引っ越したとしたら、私は現在の通勤ライフを懐古し続け、なぜこんな遠いところに来てしまったのだ、と悔やむ羽目になるだろう。
しかし、住む場所の選択肢を狭めてしまっていることによる弊害にも気づいている。
普段は降りない馴染みのない駅のあたりをたまに歩いてみると、色んな発見がある。生活圏からそう遠くないエリアでも、行ってみて初めて知る良さがある。
先日も友だちの家にお邪魔するため、あまり降りたことのない駅で降りて15分ほど歩いたのだけど、いい街だなあと思った。パン屋さん、立ち飲み屋さん、カフェなどなど並んでいるお店がオシャレで、ほどよく静か。私が住んでいるエリアには無い要素だ。
だけど、住めない。私は今会社から歩いて20分の場所に住んでしまっているから。これより遠くなると、私はきっと不満を抱いてしまう。街に対する素敵だなあという感情よりも、はるかに大きな「通勤に時間がかかる」という不満を。
この先、人生でどんなことが起こるかは分からない。
健康上の都合や家族の関連などで頻繁に通わなくてはならない場所が出来て、その近くに住む必要が出てくる、ということもあるかもしれない。そうなったら、私は渋々移転するだろう。
だけど、そのような事態にならない限りは極力動きたくない。今の会社に勤めているうちは、なんとか粘っていきたいと思っている。
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