一目惚れした人との遺伝子レベルの相性の悪さを証明した、あるもの

なんでもすぐ一目惚れしてしまう。洋服、バッグ、犬、アイドル、美容室やサロン、恋愛、本の表紙、CDジャケットetc……。
一目見た時の印象で、「良い!」と思ったら手に入れないと、経験しないと気が済まない。もちろん値段や諸々の問題で手に入れられないことも多い。
そういう時は代替え品を探す。一目惚れした対象に似ているものを手に入れると、少しは満足するからだ。
マトラッセのバッグは10代の時に一目惚れしてからずっと欲しかったけれど、なかなか気軽に買えるものでもないので諦めた。価格帯が少し下がるハイブランドのショルダーバッグを昨年購入したのと、今年ノーブランド品で3000円弱とお手頃価格だったのに高見えするキルティングチェーンバッグを手に入れたので概ね満足している。
田舎でココマークを振り回してもなんだか虚しくなるだろうし、私の人生にはきっと見合わない代物だ。
一目惚れしたものが必ずしも自分に合っているとは限らず、時には残酷な現実を突きつけられる時だってある。
小学校の時の片思いもそうだった。密かに想いを抱いていた相手は、スポーツ万能で勉強もできて、顔が反町隆史で高身長という全てを兼ね備えた男だった。
その人を認識しだしたのは3年生くらいの時で、「かっこいい人いるな〜」という感じで軽く一目惚れをしたのだ。小学校の時って、足が速いだけでも補正がかかってかっこよく見える。でもその人は、他の足が速いだけの男とは一線を画すものがあった。
それは優しさである。足が速いだけの男が虐げて笑うような相手にも寄り添い、誰にでも分け隔てなく公平に接するのだ。
同じクラスになった時に、私もその優しさを浴びた。隣の席になった時に、横顔に惚れ惚れしたのもあったが、事あるごとに紳士的な対応をしてくれたので日に日に好きになっていった。
高学年になった頃のある夏の日、体育の授業を終えると「アチいわ〜」と言って私の隣で体操服を脱ぎタンクトップ1枚になった。それだけならば良かったのだが、脱いだ体操服のTシャツでバサバサと風を集めて私へ送り始めたのである。すると、汗の染みついたTシャツのむせるような香りが風に乗って私の鼻腔へと運ばれてきた。
「好きな人の体臭を浴びられて嬉しい!」なんてことにはならず、私は鼻をつまんで咳き込んだ。
それ以降、花の咲き誇るような恋心は徐々に枯れていったのである。
後に知った事だが、体臭が好みだと相性が良いらしい。女性が男性のTシャツの匂いを嗅ぐという実験も存在しているようで、匂いが好みだと感じる男性とは遺伝子のタイプが違うので、遠い遺伝子を求める本能に合っているという。
きっとその人とは遺伝子レベルで相性が悪かったのだろう。
確かに、彼氏の首の匂いはいつまでも嗅いでいられる。猫吸いならぬ首吸いをよくする。彼氏もアプリで出会って一目惚れだったが、体臭が無理だったらきっと上手くいかなかったと思う。
一目惚れしたものが合っているとは限らない。視覚だけに惑わされず、総合的な感覚で物事を判断していきたい。
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