「違う星に生まれた」妹へ、いつも胸の奥に感じる罪悪感

私には2歳年下の妹がいる。
正確には私が早生まれのせいで年子なのだけれど、昔から「本当は違う星に生まれるべきだったんじゃないか」と思うくらいに気が合わない存在だった。
いや、気が合わないというよりも私が一方的に妹を好いていなかったのだ。
妹が私を慕って「お姉ちゃん」と後ろをついてきてばかりの時期もあった。
けれどその記憶があってもなお、私は彼女を「可愛い」と思えない。「守ってあげたい」と感じたことも、一度もないと思う。
顔も、体型も、性格も全く違う。
同じ腹から生まれてきたのに、どちらかが間違ってここに来てしまったんじゃないかと思う。
母は「お姉ちゃんだから我慢しなさい」といった類の言葉を一切使わなかった。「そういう言い方はかわいそうだ」と思っていたらしい。
でも出来上がったのは、「姉」のかけらも持ち合わせていない私だった。
教育を間違えたんじゃないかと、母も少し思っているかもしれない。
ある日、たぶん小学校中学年ぐらい。
何がきっかけだったか全く覚えていないけれど、妹の言動に対して私はものすごく腹を立てた。頭に血がのぼり、妹の大切にしていたニンテンドーDSのカセットをゴミ箱に投げ捨てたのだ。
本気でそれを壊したかったり無くそうとしたわけではない。
ただ、「それぐらいムカついているんだ」と示したかった。パフォーマンスだ。
案の定、妹は大泣きした。家の屋根がなくなるんじゃないかというくらいの大声だった。
癇癪持ちの子だった彼女は当時こそ落ち着いていたものの、感情的で怒ると男の子みたいに大騒ぎをするタイプだった。
怒鳴る私。泣き叫ぶ妹。
そのカオスな空間に気づいた母が、怒鳴り込みながらやって来て、私たちふたりの頭を一発ずつ、強く強く叩いた。
痛かった。本当に、痛くて涙が出た。妹を睨みながら泣いた。
怒りと悲しみと、「私が正しいのに」という意地が混ざり合った涙だった。
「謝りなさい」
母はそう言った。2人とも謝れ、と。
その喧嘩がどんなふうに終わったのかは、今では覚えていない。
でも、たとえ「ごめん」と言えていたとしても、心の底からそう思えていなかっただろう。
だって多分、今まで一度もあなたに「ごめん」と思ったことは無い。いつだって何をしたって、私にはもうどうしようもなく気の合わない存在だから。
妹は私よりも先に実家を出た。それからはほとんど疎遠になり、年に一度会うか会わないか。妹は、今もたぶん私のことを嫌ってはいない。誕生日にはLINEが来るし、必要なときには連絡も取る。
大人になった今は、妹のことを考えることもなければ話して心が動くこともない。
今では本当に「違う星」のような距離になった。それがたぶん、ちょうどいい。
妹や姉とすごく仲がいいという友人や知り合いを見ると、すごく不思議な気持ちになる。羨ましいとかは無い。「同じ星に生まれて合ってたんだね」と思う。
心からの「ごめん」をいつも言えなくて、ごめん。あなたに対して、ちゃんとした気持ちを持てなくて、ごめん。
どうしても好きになれない罪悪感だけはいつもある。妹への思いは、しこりのように胸の奥の方にある。
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