幼い頃から自分の身体のパーツで気に入らないところはダントツで髪!だった。

小さな頃から「サラつやストレートヘア」はイケてる女子のマストアイテムだった。小学生の頃、ちょっと背伸びがしたくて買った中学生向けの「ピチレモン」や「ニコラ」を開いて愕然とした。誌面で微笑む女の子たちは大体みんな髪の毛がまっすぐでつやつやと輝いていたし、モテ髪特集ではストレートヘアをベースにした髪型が過半数を占めていた。「サラつや髪はモテの基本♡」という見出しで私は速攻落第である。

平安時代まで遡ってみると、エッセイイストの祖といわれる清少納言女史も実は天パで、意訳すると「髪が長くて麗しい女、羨ましすぎる」「髪がうねってきて恥ずかしい」といったようなことを書いていた気がする。

まっすぐ伸びた髪が美しいという刷り込みは途方もなく根深い。無数の女の業が詰まった悩みなのだ。

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そんな私の髪の毛はというとボンバー系の癖毛で剛毛、さらに量もめちゃくちゃ多い。そしてここは、昔からチャームポイントだとも思っているけど、髪色染めたわけでもないのにかなり明るい茶色だ。つまり、モテの王道であるアイドルみたいな黒髪ストレートヘアとは何から何まで正反対の髪質をしている。

髪の毛が茶色い上にこんなふうな質感なので「ライオン」というあだ名がついた事がある。また小学生くらいだとヤンママの子供を除いて洗髪をしている子は周りにほとんどいなかったので、髪色が茶色いという事だけでイジられたり偏見を向けられる事も少なくなかった。

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髪色に関しては幸い、幼少期からなぜかずっとギャルに強い憧れがあったので、染めなくても茶髪なんてギャルっぽさがあってラッキーじゃん、くらいに思えていた。
それでも、わさわさと広がり出てきてアイロンを一生懸命あてても登校して学校に着く頃には必ずどこかうねっている髪質、二つ結びをしているのに、一つの結び目がサラツヤロングの子のポニーテールくらいぶっとくなる毛量はかなり許せなかった。そのため中学一年生の頃から大学一年生まで縮毛矯正を欠かす事なくかけていた。

Instagramの虫眼鏡マークのタブにたまたま表示されていたYoutuberの切り抜きで「髪は女の命、とかいうけど勝手に命の場所を決めんな」というような事を言っていて首がもげそうなほど同意したこともある。
分かる、私ももっと好きなパーツに命を宿させてほしい、そう思っていた。

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縮毛矯正をした日は、さらさらと風に靡く髪が視界に入るたび心が踊ると同時に、臭いパーマ液を塗られて何時間も椅子に座らないと得られないこの質感に少しの切なさを覚えた。
髪を無理してまっすぐに伸ばして、モテたかったのかと言われると多分それだけではない。

もちろん年頃だったからそれなりにそういう気持ちもあったと思うが、一番はストレートじゃない髪の毛だと楽しめないおしゃれが多いと考えていたからだ。ヘアアレンジの仕方や、それに合わせるファッションのサンプルが、直毛以外の髪質用のものは極端に少なかった。当時まだセンスも碌になくて、ストレートヘアじゃない髪でどうやって自分をいい感じに見せるのかが分からなかったのかもしれない。

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そんな私に2年ほど前に、転機が訪れる。

高校の同級生のInstagramに「自分の髪がくるくるになると知って」という投稿をみかけた。その子も私と全く同じ悩みで縮毛矯正を繰り返していたが、海外で暮らしてくせ毛にあったヘアケアを知った事で、きれいな巻き髪になったという内容だった。その子のイメージは外見も内面も美しい、という感じで、まさか同じ悩みを持っているとは思わなかった。

とても気になって実践してみると、私の髪もなんと!結構くるくるになったのだった!
よく調べてみると日本でもくるくるの髪、所謂カーリーヘアの情報を発信している人もいた。

なにより嬉しかったのは、インスタやPinterestで「Curly Hair」と調べると髪の毛がくるくるでおしゃれで魅力的な人がたくさん出てきて、ファッションやヘアアレンジなど参考にできるものもたくさんあった事だった。
SNSで多くの人がそれぞれの人生を発信し、それが雑誌などの均質化したメディアに取って代わってきた時代の恩恵を受けた気がした。ありがたい。

それ以降私は時々ストレートにセットする事もあるが、大体今は8割くらいはカーリーヘアにセットしている。人から髪を褒められる事も少し増えたし、その時に大体「パーマかけているの?」と聞かれるので「天パなんです」と答える瞬間、ほんのりとにやにやしている。

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今でも自分の髪が完全に好きになったわけではない。毛量の多さなど、まだ気になる点もある。
それでも、自分にしかできない髪型で自分を表現し、それを自分でちょっと魅力的だなと思えることが嬉しい。

髪型を変え、自分を少しだけ好きになれた。かもしれない。