これは、19歳の私の大恋愛ものがたり。

19歳大学生の春、私はモヤモヤした気持ちで毎日を過ごしていた。悩みのタネがたくさんあった。その中でも1番自分を悩ませていたのが、恋愛だった。冬には20歳になるというのに、1度も彼氏ができたことがないどころか、男の人と話すことが苦手でほとんど話したことがなかったのだ。「このままだと一生恋愛とは無縁なのかな」という漠然とした不安が常に私を取り囲んでいた。

そんな毎日を過ごしていたある日、私がアルバイトをしていた飲食店に、とある社員さんが異動してくることになった。私より1つ年上の男の人だった。初めましての日、相手は製造部門だったため、帽子にマスクを着用していて顔がまったく見えなかった。「素顔はどんな感じなんだろう?」と思った。まさかこのあと、自分の人生が180°変わることも知らずに。

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運命の日は突然やってきた。私はいつものように学校終わりの時間帯からお店に出勤した。お客さんも少なくやることがなかったため、誰もいない物置で備品整理をしていた。そのとき、「お疲れさまです!」と謎の声が響いた。突然の挨拶に私はあまりにも驚きすぎて、「ひえええぇ!!」と変な声を出してしまった。振り向くと、例の男の人が私の挙動不審さにほほえみを浮かべていた。仕事終わりだったようで、帽子もマスクもつけていなかった。この瞬間、私の心の中で「ポチョン」と音がした。恋に落ちた音だ。一目惚れって本当にあるのかな?と思っている方へ、一目惚れは、本当にあるのだ。一瞬で私の脳内すべてが彼一色になってしまった。大好きになってしまった。

この日から私の生活は一変した。毎日が楽しくて仕方なくなった。私の心はときめきとドキドキでいっぱいになった。はじめは彼のことを考えてるだけで幸せだったが、だんだん、このままでは嫌だという気持ちが大きくなっていった。そんな日々を過ごしていたある日、「彼が退職する」という話を盗み聞きしてしまった。と同時に、私の中で警報音が鳴り響いた。そして、私の告白大作戦が幕を開けた。

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恋愛経験ゼロの私には、告白なんて不安と恐怖でしかなく、エベレストを登るよりも現実味のないことのようだった。でも、それよりも「好き」の気持ちが大きすぎて、ぴょんっとそれらのマイナス要素を飛び越えてしまったのだ。私は、退職の話を聞いてから約1ヶ月間、日記帳の中で自分との作戦会議を毎日行った。結果、彼の作業着についている名札に連絡先を書いたメッセージカードを挟むという作戦に決まった。

そして、作戦決行の日。彼が職場から帰ったのを見計らってこっそり作業場に侵入し、周りから見えない角度で名札に挟み込んだ。次の日が来るまで、「彼から連絡がきますように」と祈り続けた。確認するのが怖くて、次の日のお昼まで携帯を確認できなかった。そして運命の時、心臓が弾けそうになるのを抑えながら、携帯を確認した。…彼から連絡が来ていた。私は、嬉しくて嬉しくて、泣いた。そしてその後自分でも驚くくらい順調にいき、彼とお付き合いすることができた。彼と一緒に行きたいと思っていたすべての場所に、一緒に行くことができた。私はきっと世界一の幸せ者だ…!と心の底から思い、神様に感謝した。

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時は流れ、私は大人になった。彼とは5年弱お付き合いしたが、結末としてはお別れすることになった。さらに、私はこの別れを乗り越えるまでに何年もかかってしまった。恋愛は、私が思っていたよりも、すごく難しかった。それでも、彼と出会って経験できたことや初めて芽生えた気持ちなど、人生の大切な思い出がたくさんできた。19歳の初恋、日記帳という名のタイムマシンに乗って過去の私に伝えたい、「勇気を出してくれてありがとう」と。