初恋の彼へ会いにゲストハウスを訪れた夜。天国は地獄に変わった

あなたともう一度会えたなら、私はどんな気持ちになるのだろう?
私の恋心に火がつき、ジェットコースターのように激しく揺れ動いたあの頃を思い出すと、今でも胸がチクリと痛む。あれほど舞い上がっていた自分を思い出すと、少し恥ずかしくなる。そして、彼の一挙手一投足に振り回されていた自分を思うと、ほんの少しだけ自己嫌悪にも似た感情がよぎる。でも、あれは確かに——私の「初恋」だった。
大学一年の夏、私はひとりで田舎のエコビレッジを訪れていた。
翌日、彼はシェアハウスの仲間たちとその場所を訪れた。初めて出会ったその瞬間、私は彼に心を奪われた。
誰にでも明るく、無邪気な少年のようでいて、どこか哲学的なまなざしも持っていた。自然と輪の中心にいるような彼に、私は一瞬で惹かれてしまった。
「東京に戻ったらまた会おう!」
そう言ってくれた彼の言葉を信じて、私は何度か会いに行った。でも、実際に会うと緊張して、うまく話せない。
ただ、彼の自由な生き方や、日々をハプニングごと楽しんでいる姿に、どんどん憧れが募っていった。
少しずつ薄れていた気持ちが、ある日、思わぬ形でぶり返した。
ある日、お世話になっていたアメリカ人の方とご飯を食べていた時、「気になる人はいないの?」と聞かれて、ふと彼の顔が思い浮かんだ。恋愛経験の少ない私を見て、その人は「人生は短い!想いは伝えるべきだよ」と背中を押してくれた。
心の準備もないまま、私は半ば告白のようなメッセージを彼に送った。
それから、私の中で恋の嵐が始まった。
初めて友達に恋愛相談をして、自分磨きもして、新しい服まで買ってみたりして。
「今は地方のゲストハウスで働いているよ!」と彼から連絡が来た時、私は「この想いを抱えたままではいられない」と思い、大学の課題を口実にして彼に会いに行くことにした。
道中、「私、何してるんだろう」と不安になる一方で、心はどこか浮き足立っていた。
普段は料理なんてあまりしないのに、彼のために台所に立ち、普段着ないような服を着て少しだけ背伸びもしてみた。得意な英語も披露して、彼がそれに感心してくれる様子を見て、胸が少し高鳴った。
ゲストハウスでのひとときは、ボードゲームをしたり、ほかの子も交えて過ごしたりと、まるで天国のような時間だった。
——でも、その夜、天国は地獄へと変わった。
彼が呼んだという韓国人の綺麗なお姉さんに、彼の視線は釘付けだった。私はその場にただいることしかできず、言葉も出なかった。
普段はあまり飲まないお酒が、なぜかその夜はやけに回った。
介抱してくれたのは、彼と一緒に働いていたゲストハウスの男性だった。彼はもう一人の女の子のそばについていた。
感情がぐちゃぐちゃになって、誰かにどうしてもこの気持ちを吐き出したくなって、その男性にすべてを打ち明けた。
そしてその夜、自分に空いた愛の穴を埋めるように、彼の腕の中で眠った。
それは、私にとって初めての失恋だった。
数年が経ったある日、偶然、彼と再会する機会があった。
「誰が見ても元気そうだね」と声をかけてくれた。相変わらずまぶしい存在だったけれど、私はうまく言葉を返すことができなかった。
でもその帰り道、自分の心を静かに見つめてみたとき、「ああ、私はもうこの人のことを好きではないんだな」と、どこか腑に落ちた。
それから時が流れた今、ふとインスタグラムのストーリーを見たら、彼がそれを見ていた。
胸の奥が少しだけ揺れた。
今、あなたはどこで、誰と、どんな風に過ごしていますか?
もしまた会えたら、今度はどんな話ができるんだろう。
そんなことを、春の夕暮れにふと思った。
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