ある涼しい秋の夜、長い間想いを寄せていた人と再会した。当時の私たちは大学3年生。彼はその年の春から、自分の夢を追いかけ休学をしていたため、会うのは数カ月ぶりだった。
彼が休学するまでの2年間、私たちは近く曖昧な関係にあった。

その日はなぜか、「またいつか絶対に会おう」と言われた

最初は割り切った関係から始まったはずが、いつだって飄々としている彼にだんだんと心が惹かれていった。自分と彼の気持ちの温度差に苦しくなり、何度か気持ちを伝えたけれど、その度に玉砕。何度振られても、どうしても諦めることができなかった。

彼から休学について伝えられたとき、「諦めるチャンスは今回しかない」と強く感じた。
「もうこれからは会えない。今までずっと好きだった。ありがとう」と心からの言葉を伝えた。今までのように「そっか」と流されるのかと思っていたが、その日はなぜか、「またいつか絶対に会おう」と言われたのを覚えている。
何を今更、と切なさを感じ、彼に別れを告げた。

別れを告げたのにも関わらず、再会を持ち掛けたのは他でもない私だった。その理由は、やはりどうしても彼のことを忘れられなかったからである。

日頃からよく2人で一緒に外に出かけていたため、あらゆる景色が彼のことを思い出させた。「あんなこともあったな、楽しかったな」「ここでこんな話をしたな」と思い出すたびに、彼への想いが募った。

しっかり想いを伝えて、今度こそ後腐れなく諦めたかった

「あんな人のこと忘れて次に進みなよ」という友人の言葉も全く心に響かず、彼のことを想って枕を濡らす日々が続いた。しっかり想いを伝えて、今度こそ後腐れなく諦めたかった。

「たまたま近くに用事があるから会おうよ」とこじつけ、久しぶりに連絡をした。どうか断られませんように、と願いながら返信を待った。
彼からの返事は「いいよ」の3文字。素っ気なかったが、それでも嬉しかった。
約束の日、自分にできる精一杯のおしゃれをして、待ち合わせ場所で彼を待った。「今日で自分の気持ちに決着をつける」という強い気持ちを持って。

待ち合わせ場所に現れた彼は相変わらず飄々としていたが、なぜか以前よりも魅力的に思えた。思わず見惚れてしまったが、すぐに目星をつけていたお店に足を運んだ。

数カ月どんな風に過ごしていたのか、就活は順調なのか、そんな他愛もない話をたくさんした。久々に会うとなかなかに話も盛り上がり、この時間が一生続けばいいのにと心から思った。
終電もなくなる時間に近づき、「この後どうする?」と聞かれた。肝心のことを伝えることができていなかった私は、「もうちょっと一緒にいたい」と答えた。

そのまま2人で朝を迎え、その日も他愛のない話をして過ごした

そのまま私たちは一夜を過ごした。そしてこれから先、決して後悔しないよう、今までにないほどまっすぐに想いを伝えた。彼の気持ちはぶれていないようだったが、それでもいいと思えた。

2人で朝を迎え、その日も他愛のない話をして過ごした。一緒にいてこんなに居心地のよく、楽しいと思える人に出会えることが、果たしてこの先あるのだろうかと思いながら。
だんだんと日も暮れてきて、「またね」と言って別れた。

きっとその「またね」は来ないのだろうと苦しくなったが、心は前向きだった。いつか彼と同じくらい素敵だと思える人に出会って幸せになれる、どこからかそんな自信が湧いてきた。

ある日の夜、彼からの電話。突然の出来事に頭がついていかず

彼から連絡があったのは、それから1週間くらいが経ったときのことだった。
「最近見た映画、昔一緒に見たこと思い出した。いい映画だった」という、暇つぶしにも思えるものだった。そのメッセージをきっかけに、だらだらと会話が続いた。

一体何を考えているのだろうとモヤモヤが募り始めたある日の夜、彼から電話があった。
「付き合おうか」
続けて、「久しぶりに会ったとき、やっぱり一番落ち着くなと思った」と伝えられた。突然の出来事に頭がついていかなかった。

嬉しいという気持ちはあったが、「せっかく自分の想いにけじめをつけたのに?結局傷つけられるだけかも」という気持ちが大きく、とても複雑だった。
しかし、ここで断れば私はそれこそ一生後悔してしまうかもしれない。もしうまくいかなければそこまでだと、そのとき諦めればいい。
この想いが背中を押し、「よろしくお願いします」と返事をした。なぜかその日の夜は眠れなかった。

彼とはもうすぐ付き合って2年を迎える。付き合ってからというもの、すれ違うことも多々あったが、お互いを認め合い、我ながら素敵な関係を築けていると感じる。

私たち2人に関して、付き合う前は周りから止められることばかりだった。しかし今ではありがたいことに、友人からも憧れられるほどに幸せを感じながら暮らしている。

彼のことを忘れられずに涙したいくつもの夜、そして数カ月ぶりに再会を果たしたあの夜があったからこそ、彼が電話をかけてくれた夜が生まれ、今の私たちがあるのだと思う。
これからもたくさんの夜を越えながら、ふたりの幸せを見つけていきたい。