自称辛いもの苦手だった私、辛さ40倍のレトルトカレーを難なく食べた

私が辛いものを食べる理由はただ一つ。辛いものが苦手ではないからだ。でも自分が辛いものが苦手でないと自覚したのは、つい最近のことだった。それまでは、辛いものが苦手だと思い込んでいた。だから辛いものはあまり食べていなかった。
父は辛いものが好きだった。我が家では父が絶対的な存在だったので、家に小学生の子供がいようともカレーは中辛だった。私は甘いカレーが好きだが、我慢して食べていた。父がいない日に食べる甘口のカレーは、それはそれは美味しかった。
それから月日は経ち、同棲を始めた私は、彼とカレーの辛さについて話し合った。私は辛いものが苦手で、父が食べるカレーの中辛が限界だったと伝えた。すると彼は首を傾げた。
「あのカレーの中辛が食べられるって、辛いの苦手じゃなくない? 普通嫌々でも食べられないよ」
たしかに父が好んで食べていたカレーは辛いことで有名な種類のカレーだったが、それでも私は彼の言葉に驚いた。ずっと辛いものが苦手だと信じて疑わず、辛いものを避けてきた私が、実は苦手ではなかった?
それから、私の辛いもの耐性チェックが始まった。彼は辛いものが好きなので、彼が食べているレトルトカレーやカップラーメンを、一口分けてもらい、チェックをした。
その結果、私は辛いものが苦手ではないということが判明した。
パッケージに唐辛子のイラストが並び、「辛さ40倍」と書かれているレトルトカレーも、難なく食べた。一口どころか、何口食べても平気だった。
「好きかどうかで言うと好きではないけど、まぁ普通に食べれる」
そう言うと彼はやはり「辛いの食べれるじゃん!」と言った。
蒙古タンメンのカップ麺に関しては、一口食べたら普通に美味しくて、後日店舗にも足を運んだ。
蕎麦つゆには必ずわさびを入れるようになった。チキンナゲットにはマスタードをつけるようになった。パスタにはタバスコをかけるようになった。
ずっと避けていた辛いものたちが、美味しかったのだ。二十年以上、辛いものが苦手だと思い込んで生きてきたが、世の中には辛くて美味しいもので溢れていた。
とはいえ辛いものは何でも好きという訳ではない。
わさびの辛さはとても好きで、いくらでも食べれる。でも寿司にはわさびをつけない。寿司は素材の味で楽しみたい。
からしの辛さも好きだが、納豆にからしは入れない。付属のつゆの味が好き。
カレーは甘すぎるくらい甘口が好き。彼が辛口が好きだから辛口のカレーも作るし食べられるが、自分でどちらか選べと言われれば迷いなく甘口を選ぶ。
ラーメンは辛いのが好き。カップ麺は特に好き。縮れた麺に唐辛子の辛味が合わさって美味しい。
蕎麦屋や牛丼屋のテーブルに七味唐辛子が置いてあっても、かけない。そのままの味が好き。途中で味変せずに最後まで食べ切る。
私は辛いものが食べられる。たまに食べる。でも別に辛いもの好きという訳ではない。本当ですよ。え?私は辛いもの好きとは言わないですよね?
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