最近、本当にたまに、自分でも料理を作るようになった。料理とは言っても、スーパーで買ってきた料理の素に切った食材を和えるだけ。豆腐とナスを切り、温めたおかずの素に投入してフライパンにかける麻婆豆腐茄子ピーマンを細く切って、おかずの素と一緒に絡めながら炒める肉味噌炒め

何にも食べない日やアイスしか食べないなんて日に比べれば全然成長しているし、なんなら誇らしく”自炊”と呼んでいる。

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そんな私の自炊には、一つだけこだわりがある。それは、野菜を使うこと。鶏肉を一口大に切って、塩胡椒で焼いて食べていた頃もあったけれど、それだけでは飽きるに決まっている。塩胡椒は好きだし美味しいし、鶏肉のパサっとした食感も大好きだけれど、毎日食べるのはなかなか飽きる。

そこで自分に課したのが、野菜を使うことだった。けれど今度は、食材の値段が気になる。野菜が高いという噂は本当で、ピーマンやナスがアイスよりも高いことには驚いた。それならアイスを食べれば良いじゃんという気持ちにはもちろんなってしまうけれど、そこはちゃんと野菜を選ぶ。

高いのは野菜だけじゃない。肉も魚も卵も高い。何を買うにも値段ばかりが気になってしまう。

母の作る料理は、食材の数が豊富だった。鍋に入れるきのこが3種類あったり、冷蔵庫に野菜のピクルスが数種並んでいたり。私なら、栄養や彩りよりもお腹にたまるもので安く済むものを買うし、野菜は1種類でも入れられれば上等だと思っている。

もちろん、色んな野菜を使って料理がしたいのが本当の気持ちだけれど、そう単純な問題でもない。現に、皿うどんが大好きだけれど、数種類の野菜に加えて、かまぼこやうずらの卵を一食のためだけには買えないのだ。

自分の虚しい経済力にも直面し、やっぱり料理はハードルが高いと気が沈む。何気なく食べていた母の料理が豪華だったことにこうして気付く。なんとも厳しく、母を尊敬せざるを得ない現実だ。

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虚しい気持ちで投げやりになりながら、母に野菜が高いと話すと、「今さら何を言うのよ」という反応だった。いつだって何かが高いのだから、上手くやりくりしなさいと。どうすれば良いのとさらに聞くと、野菜は保存方法を考えれば長く保つ、と当たり前のように言うが、料理をしない私には目から鱗な意見が出てきた。

私は、野菜の保存期間なんて分からないから、基本的にはすぐに食べる分か長くても3日で食べられる分しか買わなかった。野菜の選び方も分からないし、見た目が綺麗なら大丈夫!と選んでいたら、すかすかの野菜だったこともあった。とりあえず冷蔵庫に入れておけば最低期間は保つでしょ!と切った野菜をそのまま冷蔵庫に放り込んでいたことも。

すぐさまスマホで野菜の保存方法と保存期間を調べた。するとびっくり。だいたいの野菜が下処理や保存方法に気を遣えば2週間は保つことが分かった。冷凍できる野菜もある。

これで野菜が買えないと惨めな思いもしなくて済むし、何より自分の力で食事ができるという喜びがある。

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自分で台所に立ってみて、スーパーに出向いてみて初めて気づいた。野菜を食べる難しさも、料理をする手間も、冷蔵庫・冷凍庫との上手な付き合い方も。

食事には、人間として食べなければ生きていけないという欲求がある。自炊をすることには、自分で食べていくことの誇らしさがある。

ひとつ、大人になったような気がした。まだまだ未熟な自炊だけれど、なんとか上手くやっていけそうだとも思う。