かわいくて賢くなりたかった私が「ありのまま」を知った就労支援体験

私は現在28歳。これまでずっと背伸びをし続けてきた人生だった。だが、最近、背伸びをしない自分を受け入れたいと思い始めた。
私は、保育園の頃から顔がかわいかった。地元の小学校に上がっても、そんな噂は回って、私はモテるかわいい子というキャラだった。
だが、小学校高学年になると、クラスの半分くらいは中学受験の勉強を始めた。私は親の方針で、中学は地元のところへ行き、自我が芽生えてから高校受験をする決まりだった。
私の初めての友達は、かわいくて、明るくて、クラスの中心にいるような子だった。その子も中学受験をすると言う。その子が塾に通い始めると、クラスの男子達は、「◯◯、これ分かるか!?」などとクイズを出していた。塾に行っていない私は、そんなに分からないし、聞かれなかった。
私は、今でも、「かわいくて頭が良くなりたい」と思っている。妹に言わせれば、「この辺に住んでいる子は、皆初めはそう思う」とのこと。
だが、私は、価値観が変化することなく今日まで来た。
そんな私が、ありのままを認める、ということをきちんと考え始めたのは、就労移行支援事業所の体験に行ったからだ。
就労移行支援事業所というのは、精神障害や知的障害、身体障害を持ち、働けていない人が仕事に就くまでをサポートする施設だ。
私は背伸びの癖により、大学受験は随分高望みをし、体調を崩すまで自分を追い詰めてしまった。精神の病気になり、21歳の時から精神科に通い、毎日薬を飲んでいる。
主治医からは、いつも努力しているけれど努力しなくてもいいと思うこと、ありのままを認めること、自分に厳しすぎるのをやめること、などを言われた。
ずっとピンと来ていなかったが、事業所で体験をし、面談をして考えが変わった。事業所では、私が周りの利用者の方の症状の重さに驚き、それに気づいた職員さんが面談の時間を取ってくれた。
利用者の方と接すると暗い気持ちになる、ということを伝えた私に、職員さんが言ったことは、「受け流す力や、他人と自分を切り分ける練習になる」ということだ。
確かに、私は新卒で入社した会社でも、苦手な人や注意されたことを受け流せず、受け止め過ぎてしんどくなっていた。
事業所の職員さんの言葉は、「心って鍛えられるんだ」と感じた。
今は、まだ「すごい自分になりたい」「かわいくて頭が良い自分になりたい」と思っている。だが、それが違うのではないか?と気づき始めたところだ。
ずっと背伸びをしてきた私。かわいいとチヤホヤされて、頭が良いことに憧れていた私。親からの条件付きの愛情。
事業所では、目標設定の講座を受けた。「現在の自分と未来の自分を比べる。その間を埋めるために行動計画を立てる」。すごく当たり前のことだけれど、私は初めて腑に落ちた。
「すごい自分になりたい」という背伸び癖は、今後少し形が変わるかも知れないーーそんな予感がした。
これまでずっと背伸びをしてきた私。背伸びをし続けて見えてきたことは、背伸びをしなくてもいいのかも知れないということだった。
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