私はすぐに顔が赤くなる。いわゆる赤面症だ。特に耳は赤くなりやすく、いつも髪の毛をおろして耳を隠している。体育の後や好きな人と話す時、ひどい時は異性と目が合うだけで赤面してしまう。

そんな私に好きな人ができた。ここではY君とする。毎回、顔が赤くならないように願ってから話しかける。やっぱり少し赤くなっている気もするけど、何もせずに恋が終わってしまうよりはいい。と思いこんで話しかける。

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好きになると盲目になるのは全世界共通だと思うが、私の場合は積極的になりすぎてしまう。本人に好きなタイプを聞いたり、そのタイプと自分は近いのか聞いたりしてしまう。友達からは「わかりやすいよね」と言われるし、Y君も私の好意に気づいているだろう。

とある6月の日、まだ梅雨の季節のはずなのに、35度超えの猛暑だった。こんな暑い日に体育があり、ポニーテールをしてくる子が多い。そんな中、私はどうしても髪の毛を結べなかった。赤面した時に守ってくれる髪の毛がないと生きていけない。暑さよりも、恥をかきたくない気持ちが大きい。

次の日、何気なく友達と髪型の話をしていた。私は日本の女性アイドルがとても好きで、「この子はいつも髪の毛をおろしてるけど、あげてるのも可愛いの!」と盛り上がっていた。すると、Y君が近くを通り、気を利かせた友人がその人に「ねぇ、◯◯はどの髪型がいいと思う?と聞いてくれた。

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正直、私はこの質問を避けていた。なぜなら、聞いたところで耳が出る髪型はできないから。好きな人はスマホの写真を指差し「これ」と言う。それはハーフアップだった。

ハーフアップが男性陣に人気なことは分かっていたし、家で何度か挑戦してみたこともある。自分で言うのもあれだが、似合っていた。けれども、ハーフアップは耳が出る。赤くなったらすぐに分かる。隠せないともっと赤くなってしまうことも自覚している。

家に帰ってからも悩み続けたし、朝起きてからもずっと悩んだ。結局私はいつもどおりの髪型で学校に行った。友達がアシストしてくれて好きな髪型を知ることができたのに、とても申し訳ない。後悔が募り続ける。

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Y君がいつも通り登校してきた。その姿を見た瞬間、今までの自分の行いを思い出した。私、好きバレすること沢山してるじゃん!今更、話してる時に赤面したって関係なくない?!

すぐにお手洗いに駆け込み、鏡を見ながらハーフアップにする。Y君だけでも可愛いと思ってくれますように。そう願いを込めながら。

緊張しながら教室に戻り、Y君をチラ見する。こっちは全く見ていなく、若干落ち込んだ。その日の休み時間は、いつもよりY君の近くにいることを意識してみた。そんな努力虚しく、Y君は話しかけてくれなかった。

そろそろ帰ろうと思い、Y君と席が近い友達のところへ行く。だけど友達はいない。仕方なく友達の席に座ってスマホを見ながら待っていた。すると、目の前の椅子に誰かが座った。顔を上げるとY君がいた。今だ!と思い一日中聞きたかったことを聞いた。

「ハーフアップいい感じ?」
「いつもいいけど、今日はよりいいね」

思っていた以上の答えが返ってきた。Y君はいつも私のことを見てくれてたんだ。ハーフアップはそのいつもよりもっといいと思ってくれたんだ。やっぱり私はY君が好き。そして、ハーフアップも好きになった。

それから私は、毎週金曜日をハーフアップDAYに設定している。私が髪型を変えるきっかけをくれたY君、ありがとう大好きです。