ドキドキワクワク新学期を迎えた小3の春。その日は席替えだった。
隣になった男の子Y君は、クラスのムードメーカー的存在で、みんなを引っ張っていってくれる、元気の良い男の子。席替えで席が隣になって、「よろしくね」とはにかむ笑顔に私は心を打たれた。
初めて感じた、ドキッドキッというなんともいえない感情。
初恋のバレンタインデー。たどたどしく、一生懸命作ったチョコを渡す
その時から私は、まともに目を合わせて話すことが出来ず、どこか、おどおどとしてしまっていたこともあり、思うようにY君と会話をすることが出来なくなり、「うんそうだね」「いいね」と言われたことに対しての返事がやっとだった。
そうこうしているうちに次の席替えがやって来てしまう。しかし、その年の席替えは驚くことに12回のうち10回、Y君と隣だったり班が一緒だったりした。私はその度、心の中でテンションが上がっていたが、会話がなかなか出来ずに日は過ぎていった。
そんなこんなでやってくる2月14日。私ははじめて好きな人にチョコを届けに行った。
チョコを溶かして型に流し込んで、固めて、袋に包んで、心を込めて作った。
幼かったこともあり、母に車で家まで連れていってもらった。
しかし、いざ到着すると緊張してしまい、インターホンの前で何度も押すか押さないか迷いウロウロとする私。「どうしようかな、喜んでくれるかな?迷惑じゃないかな?」なんて心の中で思ってしばらく渡せなかった。
だが、迷った結果、思い切ってインターホンを鳴らした。いつもと変わらない様子で笑顔を見せながら、家から出てくる。
「あの、これ、よかったら」とたどたどしく、Y君に一生懸命作ったチョコを渡した。すると、「ありがとうございます」と丁寧な挨拶と共に受け取ってくれた。これが、私の初恋のバレンタインデーの始まりだ。
「好き」の2文字を言えないまま6年間、毎年チョコを届けた
そこから、中学3年生までの6年間、私は片思いのまま、毎年2月14日には手作りのチョコを届けにいった。
毎年変わらず笑顔で「ありがとうございます」と受け取ってくれ、お返しも毎年きちんとくれた。
飴や、チョコレート、クッキーにメッセージが書いてあることもあった。その度に私は大切にたべた。毎日1個、自分へのご褒美と思い、大事に大事にたべた。
しかし、好きの2文字が言えず、中学の卒業をも目前となる。クラスが一緒だったこともあり、何度か遊ぶ機会もあったが、その先に発展することはなく、中学を卒業してからは、高校も離れ離れになってしまい、会う機会もなくなり、チョコを渡すこともめっきりなくなった。
中学を卒業して5年後。私達は少し大人になって、成人式で再会した。短髪から髪の毛が伸びていて、身長も伸びてピシッとスーツで決まっていた。
久しぶりの再会に少し照れてしまったが、「綺麗になったね」「バレンタインもうくれないの?」と変わらず笑顔で話しかけてきた。
実ることのなかった恋だったが、私にとっては特別なバレンタインの6年間だった。
今では、気軽に思ったことを話せたり、食事に行ける仲になった。