小学校一年生の時、A君に一目惚れをした。
本当に一目見て大好きになった初めての経験だった。
その時の気持ちを当時作文にして、先生から褒められたうえに、発表までさせられたこともある(今思えば恥ずかしい経験だ)。

一度A君に告白をしたことがある。告白されたことを、A君は母親に話したらしい。そうしたら、「自分より頭のいい人はやめなさい」と言われたと誰かから聞いた。
私のA君を好きな気持ちは、小学校を卒業して離れ離れになるまで続いた。

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A君は完全に顔がタイプだった。それだけだ。小学生の恋なんてそんなもんだろう。私がその人のことが好きなのは、友人の間でも、保護者の間でも有名になった。

中高の6年間は女子校で、他に好きな人ができたこともなければ、A君のことを思い出すなんてこともなく過ごした。誰かが好きだとかそんな気持ちはなく、友人たちと思い出を作る日々だった。

A君と再会したのは、浪人生活を送っていた時のことだった。A君もどうやら浪人しているらしいという風の噂を聞いたのだ。知人に介入してもらい、私はA君と再会を果たした。A君と話していると、また好きになってしまいそうだった。今思えばだが、私の話をなんでも肯定してくれたことによって、自己肯定感が高まっていたのだろう。好きというよりはカウンセラーみたいな感じだったのかもしれない。

A君と同じ大学に行きたい!なんていう情熱も一時的には生まれたが、入試までは続かず、A君は私よりずっと頭のいい大学に進学した。
大学進学後も会おうと画策まではしたが結局できずじまいだった。

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成人式も終わり、もう2度と会うことはないだろうな、と思っていた矢先、まさかのところで再会した。就活の説明会だった。それも2社で遭遇した。つまり、似たような業界を目指しているということなのだろう。

周りの友人たちは、運命の再会からの恋がはじまったりして!だなんて騒ぎ立てた。しかし、私は違う感情が芽生えていた。当時私は自分には到底目指せないだろうなというレベルの企業を受けていた。A君は優秀だし、きっと入社できるんだろうな。向こうばかり夢を叶えて私は叶えられないんだろうな、という劣等感だった。

幸い私は希望のところは就職できた。A君の姿はなかった。

A君に就職後に一度連絡を取ってみたことがある。説明会であったことには気がついていなさそうだった。
そして風の噂でA君が結婚したことを知った。私の初恋は終わった。

今ではA君を好きな気持ちはないし、劣等感もない。でも、小学校からのその恋の記憶は、意外にも良い思い出で終わっている。