一瞬で心を奪われた初めての経験。臆病者の私が勇気を振り絞ったとき

私は人生で一度だけ、大学生の時に、男の人に一目惚れしたことがある。最終的にはその人と付き合えたのだから、結果だけ見れば大したものだと自画自賛をしてみる。
中学生の頃は、日々恋愛に忙しくって、授業か部活か恋愛のことしか頭になかった。 元々惚れっぽい性格ではあったと思う。だから一目惚れのような経験は何度かあったのかもしれない。同じクラスの男子、他のクラスの男子、先輩、後輩。面食いの自覚もあった。
かっこいいな、かわいいなと気になる人を見つけては、勝手にその人と仲良くなったり、両思いになったりすることを想像していた。自分からグイグイ行く勇気はないので、妄想して、友人たちと、〇〇くんと話せたとか、目が合ったとか、笑ってくれたとか、キャーキャー言うだけ。
小さい頃から、少女漫画が大好きで一目惚れをしてみたいという憧れはずっとあった。幼馴染と。道端で運命の人とぶつかって。他校の生徒と、ホーム越しに惹かれ合って。とか、色々と妄想した。残念ながら、これといって惹かれあうような幼馴染もいなければ、運命の王子様とぶつかることもなく、電車通学でもなく、ホームで……なんて夢のまた夢だった。
そんな憧ればかりが先行して、一目惚れってきっと、意識せずに、ふと恋に落ちるもののはずなのに、自分から狙っていたのではないかとすら思う。だから、これまでも第一印象で素敵だなと思う人はいても、これは一目惚れか?本当に惹かれているのか?思い込みたいだけじゃないのか?と心から引かれるまでの障壁があったようにも思う。
そして、運命の時。
大学の友人の誘いで、社会人男性3人に対して私たち女性陣は4人。しかも半分出来レースのようなもので、友人の2人と、男性陣2人は、面識があり、既に上手い具合に男女のペアができて付き合う寸前という感じ。状況からして、あまり自分の出番はないようにも思えたけど、人生で初めての合コンに心躍り、参加を決意したのだった。
彼の全てが私には、魅力的に見えてしまった。でもそれは、友人達にとってもそうだった。 ひとりだけ遅れて参加してきた彼。ひとりだけ先輩で。終始緊張していた私は、合コンで何を話していたか全く覚えていない。
そして、お会計。気づいたら、彼が払ってくれていた。 2件目に行くこともなく、連絡先を新たに交換することもなく、悪く言えば残念で、よく言えば健全で、後ろ髪を引かれる思いだった。
友人達との帰り道。先輩の彼が、かっこよかったスマートだった、との話題で持ちきりだった。私もドキドキしていた。と同時に、連絡先も交換せずに別れてしまって、次回の約束もない。繋がりが何もない状況に悲しさや焦りを感じていた。
友人と別れた後も、彼のことが頭から離れなくて。今までの私だったら勇気なんて出ないだろうに、勇気を振り絞って友人に連絡先を聞いてもらった。
幸いにも彼のLINEを手に入れて、何とメッセージを送ろうかと悩んで悩んで、無難に 「この間はありがとうございました」といった具合でメッセージを送った。
「よければ、お礼に?またご飯でも行きませんか?」緊張で少し震える手でLINEを送った。
たった一回、合コンで会っただけ。ちゃんと顔をまっすぐみれていたかもわからない。夜だ し、居酒屋だし、薄暗い店内で、どれだけ正確に認識できていたのか。それでも、気持ちが先行していた。そうか、これが一目惚れか、と。1人になって実感した。
1人で、まだ思い出すほどもない彼の面影や言動を想像して、ドキドキして、会えないことが寂しくて、また会いたいと強く思った。
この機会を逃してしまったら、もう彼とは二度と会えないかもしれない。そんな思いが、臆病者の私を駆り立てた。
もしかしたら、初めてだったし、よく見えなかったからかっこよく思っただけかもしれない。 そんな思いも、2回目ふたりだけで食事に行った時に、打ち砕かれた。初めての時と同様に、 私の鼓動もときめきも収まらなかった。
これが私の初めての一目惚れの経験。その後の彼との日々は、あまりいいものではなかったけれど、あれほど異性に対して一瞬で心を奪われた経験はなかった。そんな思いだけでも、今は経験できてよかったと思っている。
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