壊れるほど苦しかったあの日々を越えて、いま私は私を抱きしめる

私は過去の自分に「ごめん」と言いたい。
私は19歳の時、置き手紙だけを置いて家を飛び出した。
元々家庭環境に不満を持っていたのもあり、そのストレスに耐え切れなくなったからだ。
しかしまだ学生だったのでお金もなく、激安のシェアハウスの物件を借りて生活をしていた。家を出てから家族とは一切連絡を取らなかった。
私は生活費や学費を支払うためにアルバイトを掛け持ちし、朝5時まで働く日もあった。
寝れない日々が続き、学業との両立がうまくできなくなっていく。
学業を優先したいがいつお金がなくなるか分からない。
もう誰も頼れない。帰る家もない。そんな不安で毎日泣いていた。
そして私を嘲笑うかのように当時付き合っていた彼氏にも別れを告げられた。
彼は2個上の21歳。同じ学校の人だった。
家庭環境について悩んでいた私に、家を出る提案をしたのは彼だった。
唯一頼りにしていた彼からも裏切られ、私という人間に価値はなくなったんだと自分を責めた。
そんな生活をしていたある日学校から1本の連絡が入る。
「お母様から100万円の納付がありました」とのことだった。
私に重くのしかかっていた何かが一気に軽くなった。
親はもう私の事を娘として見てくれていないと思っていた。でも私の事を考えてくれる人はまだいる。それが何よりも嬉しかった。
私は震えながらお母さんに電話をかけた。
なんて言われるだろうか、何を話そうか、そんな不安を抱えているとお母さんが電話に出た。
お母さんは私の名前を呼びながら泣いていた。
「生きていてよかった、一人にさせてごめんね」と泣きながら言ってくれた。
1カ月以上ぶりのお母さんの声に安堵し、私も泣いた。
「もう忘れられたかと思った」と私が言うと、「一度も忘れた日はないし考えなかった日もない」とお母さんが言ってくれた。
それから少し経って、お母さんと再会した。
1カ月前と変わり果てた私の姿に、お母さんはただ泣いて謝っていた。
「本当に痩せちゃったね」とお母さんがずっと言っていた。
自分ではあまり気にしていなかったが、家に帰ってから一応体重計に乗った。
すると1カ月前の体重から10㎏以上も落ちていたのである。
さすがにまずいと思ったが、少し嬉しさもあった。
私は高校生の頃から痩せたいという気持ちがあった。運動や食事制限もしていたが、元々やせ型だったのもあって中々体重を落とすことができなかった。
なのに1カ月でここまで体重を減らすことができた自分が誇らしかった。
「こんなに体重を減らせて、私よく頑張ったな」と自分自身を認めてあげられた瞬間だった。この考えがのちに私を苦しめることになるとは思いもしなかった。
お母さんとも再会して家族と和解してからも、実家には帰らずに一人での生活が続いた。
私は1カ月何も食べていなかった反動から食欲が止まらなくなっていた。
せっかく痩せたのにこのままだと太ってしまう。そんな不安から食べたものを吐き出すようになった。ダメだとわかっていてもスイッチが入るとその食欲は止められない。吐き出すことで体重をコントロールできている安心感、そして不安やストレスも吐き出せるような感覚になれる。
過食嘔吐をしてしまう自分が嫌で、次第に食べることが怖くなり何も食べない日が続く。しかしその反動でまた過食嘔吐をしてしまう。負のループだ。
そんな摂食障害と私は今も闘っている。
昔の自分に戻れるなら、私が価値がない人間だと自分自身を責めたことを謝りたい。
この世に価値のない人間なんていないのだ。
自分を少しずつ認めていけるように、私はこの病気と闘い続ける。
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