「なおこって、かわいいよりかっこいいイメージだよね」

高校時代からの友人たちはよくこう言う。

そんな私が結婚する、フォトウェディングをすると話したとき、正直な友人たちはこう言った。

「なおこは、ドレスよりスーツの方が似合いそう」

その言葉に悪気はなかったし、私も悪い気はしなかった。実際タキシードを着てみたい気持ちもあったし。

でも、私はドレスが着たかったのだ。

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こう見えてディズニー好きで最推しプリンセスはシンデレラ。

ウェディングドレスは白でスタイルを良く見せられるマーメイドドレス、カラードレスはシンデレラブルーのフワッと広がるドレスが着たかった。

夫は、私の趣味も分かっていたし、どんな私も肯定してくれるから「好きな服を着たらいい」と言ってくれた。

ドレスの候補を3着ずつ決めて、試着することになったことを友人に伝えると、そのうちの数人が見学に来てくれることになった。

「なおこのドレス、見てみたい!」
「マーメイドドレス、いつもの雰囲気と変わりそう!気になる!」

ドレスのイメージが湧かないと言っていた友人たちからのそういう言葉が嬉しかった。

当日になり、まずカラードレスを試着した。
第3希望のブラウンドレスはチュールドレスにキラキラがいっぱい付いていて、思っていた以上によかった。初めてのドレスでテンションも上がった。

◎          ◎

緊張しながら友人たちの前に出たら、彼女たちは歓声を上げた。

「なおこ、めちゃくちゃ似合ってる!」
「ドレスがこんなに似合うのなら、本命のシンデレラブルーはきっともっといいね!」

嬉しい言葉が降りそそいだ。私もくるくる回ってみたり、キラキラが動くドレスに夢中になった。

ドレスを着てみてよかった。
心の底からそう思えた。

第2希望のコバルトブルードレスは生地もパリッとしていて、写真とイメージが違った。
ワンポイントの銀色の刺しゅうも美しく、かわいいというよりは綺麗というイメージ。

いよいよ第1希望のシンデレラブルードレス。これが1番着たかったのだ。

着てみて最初の感想は、あれっ?だった。
私が思い描いていたシンデレラブルー、ちょっと淡すぎる?

友人たちの前に出ていくと彼女たちも複雑な顔をした。

「似合ってるんだけど、さっきのコバルトブルーのほうが写真映えしそう」
「なんか、思ってたのと違うかも…?」

正直に言ってくれる彼女たちと私も同じ想いだった。
1番着てみたかった服なのになぁ。

夫は、「写真映えとかじゃなくて、なおこの好きな方を選びなよ」と言ってくれた。

熟考して選んだのは第2希望のコバルトブルードレスだった。
シンデレラにはなれないけれど、私が1番気に入ったのはこのドレスだったのだ。

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ウェディングドレスも第1希望のマーメイドドレスは、なんだかしっくりこなかった。

ちょっと複雑そうな私の顔を見た店員さんが、ロングトレーンのアイボリードレスを持ってきてくれた。

ロングトレーンのウェディングドレスは、シンデレラも劇中で着ており、憧れの1つだった。
似合うかな?という不安は着て動いてみると消え去った。

「ウェディングドレス、絶対これがいい!」

心からそう思った。

友人たちに見せると、いろいろな角度から写真を撮って、私に見せて喜んでいた。
別に人を喜ばせるために着たわけではないが、彼女たちが喜んだのは、私の表情に満足げな感情が出ていたからだと思う。

フォトウェディングのドレスは、どちらも第1希望のドレスを選ばなかった。

でもそれは、着たい服を着た結果、もっといい服を見つけられたからだ。だから、着たかったドレスを着られてよかった。

ドレスのイメージがないと言われていた私が、自分の好きなドレスを選んで、実際にプロカメラマンに撮影してもらった写真をアイコンにするほど好きになった。

着たい服を着ることは、自分の好きを増やすことなのかもしれない。