片道2時間。私が通学にかかる時間である。週5で往復するので一週間で20時間。こうしてみると結構かかっている。初めて会う人には必ず驚かれるし、出身が同じ友達も、だんだん大学の近くに引越していった。大学で仲のいい友達は、全員一人暮らしをしている。

それでも私は実家から大学に通う。

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どうして実家にこだわるのか。第一の理由は、ずばり、「通える」からだ。特急や新幹線を使わずとも行き来できるこの距離は、一人暮らしをするにはちょっと近すぎる。人より距離があるので定期は高いが、学生アパートの家賃と比べたら圧倒的に安い。

私は修士課程、できれば博士課程まで進みたいと思っているので、今から一人暮らしをしてお金をかける訳にはいかないのだ。それに長い通学時間を利用して色々できる。授業の予習、資格の勉強、そして今みたいにエッセイ執筆、等々。

こんなことを書くと、金銭面を気にして仕方なく実家から通っているのか、と思われるかもしれない。だが、それは違う。私は、地元と実家を愛しているのだ。

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まず、私の地元には田舎と都会のいいとこ取りのようなところがある。高層ビルが立ち並ぶような都会の喧騒とは無縁だが、駅や高速道のインターが近く、交通アクセスはかなり良い。さらに、私の家から徒歩圏内に大型ショッピングモールがあり、とても便利だ。

セール時に出かけようとして渋滞に巻き込まれると厄介だが、初売りに徒歩で参戦できるのは地元民の特権。さらに、家のすぐ近くでバイトを2つ掛け持ちしている。

時給はそこそこ良くて勤務時間も程よい長さだし、何よりありがたいことに社員さんや他のパートさんがとても良くしてくれるので、まだ辞めたくない。近所の人達も色々と気にかけてくれて、会った時には必ず挨拶するしよく話す。私は地元の街も人も大好きなのだ。

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実家を愛する理由は言うまでもない。家に帰ったら母がいて、美味しいご飯を作ってくれる。いつか自立する時のために自分でも料理を作ってみるが、到底敵わない。家事もやらなければと思いつつ、ついつい甘えてしまう。

部屋が汚い、だらけているなど時々怒られることもあるが、基本的に母と私は仲が良いので居心地がいい。気まぐれで私が焼き菓子や小さいケーキを買って帰ることがあり、それを2人で食べるのも楽しい。いつかは家を出るのだと思うと、母との時間は大事にしたいと思っている。

こんな悠々自適な実家ライフを謳歌している私だが、時々不安になる。実家に長くいればいるほど情がわいて、将来自立できないのではないか。同世代で一人で暮らしている人はたくさんいるのに、自分は大丈夫なのだろうか。そんな悩みを大学のある先生に打ち明けたところ、こんな言葉をもらった。

「帰ったら安心できる場所があることって、とても重要だし強みだと思うよ。甘えれる時は甘えさせてもらって、勉強とか他のことに集中できる今の環境を大事にしたらいいんじゃない?」

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そうか。今は私的には自立する時ではなくて、他のことに集中できる貴重な時期なのか。そう思って、今の環境に感謝しながら実家暮らしを引き続き続けていこうと思う。もちろん、いつか一人で暮らすときに備えて家事の練習は続けていくつもりだ。