「似合う」より「好き」で選びたい。スラックスがくれた私の決定権

私は、スタイリッシュな服装が好きだ。
パンツコーデが似合って、颯爽と街中を歩くイメージ。
子どものときから、テレビドラマのなかでカッコいい女性が働く姿に憧れていた。仕事もテキパキとこなし、自信に満ち溢れているように見えた。
私もあんな風になりたい......!
それから数年が経ち、大学生になったとき、パーソナルカラー診断が流行った。
自分に合う色を客観的に見てもらい、それを元に似合うメイクや服装をアドバイスしてもらえるというものだ。
鏡の前に座り、黄色、赤、青、ピンク......約30種類もの色の布を一枚一枚あてていく。
さらに、対峙する色や、同じ系統の色を同時にあて、どっちの方がより似合うかどうかを見て、診断していく。
友人と一緒に診断を受け、「こんな色も似合うんじゃない?」「意外と明るい系が似合うのか!」などと、色んな発見もあり楽しかった。
診断が終わった後は、メイクやファッションのアドバイスもしてもらった。
私の診断結果は、イエベ春。暖色系が似合うとのことで、なかでもコーラルピンクのような色が良いらしい。
これまで全くピンク系を選んでこなったが、せっかく診断してもらったので、コーラルピンク系のコーディネートをするようになった。
さっそく新しいコーディネートで大学へ行った。授業に出ると、それまであまり話したことのない人からも「似合ってる!」「いいね!」と褒められた。
やっぱり、褒められると嬉しいもので、私のクローゼットはピンクばかりになった。
街中を歩いていると、男性に声をかけられることも多くなった。
ピンクを取り入れる前は、ナンパなんてされることほとんどなかったのに......
率直に「舐められてる」そう感じた。
外見のイメージがいわゆる男性ウケのいい「ふわふわした女性」に変化したからだろうと痛感した。それからクローゼットのピンクを見るたびに、心のどこかでザワザワするような感じを覚えた。
ふと、ピンクのコーディネートで鏡にうつる自分自身を見て、なんだか曇り模様の表情をしていることに気づいた。
たしかに、パーソナルカラー診断を受けたことでファッションやメイクをより楽しめるようになった。
だけど......私が本当に着たい服ってなんだっけ?
この疑問が私の頭の中をこびりついた。クローゼットの奥から、かつての私が愛用していたスラックスとブラウスを取り出した。
私が本当に着たい服、見せたいイメージは、「カッコいい」だったことを思い出した。
かつて愛用していたコーディネートをしてみると、とても心が軽くなった。
「ああ、これだ」という納得感。
私が好きな私は、自分の軸があって、やるべきことをテキパキとこなし、目標に向かって頑張る私。
それを表現できるのは、ふわふわなピンクのスカートではなくて、スラックス。だから私は、スラックスを使ったコーディネートが好きだったんだ。それまでいかに世間や他人に迎合しすぎていたかを思い知った。
着る服のパワーはすごい。
「何を着るか」で見られ方や、自分の心持ちも変わってくる。
私はスラックスを履くと、仕事のやる気モードになるし、スウェットを履くとリラックスモードになる。ふわふわなスカートを履くと意志薄弱になる気がする。
客観的な指標にのっかるだけというのは非常に簡単だし、楽だ。
だって、言われたとおりのコーディネートをしておけば褒められるし、好印象を与えられるんだもの。
でも、それ以上に自分が自分を好きになれなかったり、納得感が得られなかったりする方が、よっぽど辛い。
だからこそ、何を選ぶかの決定権は、世間や誰かに委ねず、自分でしっかりと持っていなければいけない。
そのことを忘れずに、ファッションを楽しみたいと思う。
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