実家暮らしをしている人には尊敬しかない。私には到底できないことだからだ。子どものころは当然ながら実家で暮らしており、実家が行動範囲の中心となっていた。

けれど、実家にいる私は違和感を常に抱いており、なにか変えられる術やタイミングはないかと探っていた。今振り返っても、実家暮らしをしていたときの私は、私でないような気がしている。実家なのに、猫を被っているかのような感覚だ。よそ行きの気持ちで、人に気を使いながら生活をしていた。実家暮らしにはそんな印象が強く残っているので、私には一人暮らしという選択肢しかなかった。

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実家暮らしであれば、どのようなメリットがあるのだろう。もしも私が実家暮らしをしていたらどんな生活を送るのだろうか。この機会に少し考えてみることにしよう。

まず、メリットとして、家賃が浮く。これは大きいだろう。収入があれば親にいくらか渡すという制度を設けている家庭もあるが、それでも一人暮らしにかかる家賃よりは安い。家賃は大きな出費の一つなので、かなり助かるはずだ。

つづいて、食事。親が作ってくれる食事が少なからずあるので、必ず3食自分で用意しなければいけないという義務感が少なくなる。ただこれは、私にとってはメリットとしてのパーセンテージは少ない。もともと料理は好きな方であり、3食作るのはそれほどつらくないからだ。さらに、自分の家族を想像したとき、おそらく私が家族分の食事を作る日も出てくるだろうと予想できた。なので、あまりメリットとは言えないかもしれない。

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実家で暮らしたとき、生活としてはどう過ごすのか。きっとなにかしていなければ気がすまない人になっているだろうと思う。一人であれば自宅で過ごしていても、どれだけ遅くまで寝ていても構わないのだが、家族がいると気を使ってしまう。

起きて行動をしなければいけない。ご飯を食べたい時間に家族が作業をしているかもしれない。などいろいろ想像ができてしまうからだ。自分のペースで動けないとストレスをためてしまうので、きっと実家暮らしが続く時間はそれほど長くないだろう。今から実家暮らしを始めたとしても、1ヶ月持つかどうか、という懸念しかない。

想像してみても、実家暮らしはきっとできなくなると予想できる私。

だから私は実家暮らしをしている人をとても尊敬するのだ。家族と住む方が心地良いと思える感覚は私にはない感覚なので、とても新鮮な思考回路のように思える。ご飯が出てくるからいい、自分の部屋でずっと過ごせるからいい、というところをメリットとするのも、私にはない発想だ。

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たまに、実家暮らしは甘えだ。と言っている人がいると聞くこともあるが、私は実家暮らしも一つの才能だと思っている。少なくとも私にはできないことなので、それができる人は才能がある人だ。一人暮らしよりも貯金ができるイメージもあるので、趣味や将来のために使えるお金を貯められると考えると羨ましいと思う。もし来世で選ぶときが来たら、いろんな角度から比べて選んでみてもおもしろいだろう。自信を持って選択できる気がする。

これまでは一人暮らし一択で突き進んできた私も、いつか実家暮らしを視野に入れなければ行けない日が来るかもしれないと考えるようになった。年齢や親のことを考えるとありえない話ではない気がしている。

だからメリットを考え始めた。考えるたびに向いてないと答えが出る私だが、先はまだわからない。選ぶことになったとしても、メリットを感じながら実家暮らしができるように、ポイントを見つけておくのはいいことだろう。だが、今はまだ実家暮らしは遠い存在だ。自分にはできる気がしない。

今、一人暮らしを謳歌しており、何事もなく幸せに過ごせているので、とても満足している。この生活を変えてまで実家暮らしにシフトはできないだろう。とりあえず今は、一人暮らしでしか味わえない幸せを噛み締めることとする。たまに将来のことを考えながら、実家暮らしのシミュレーションをしてみるくらいでいようと思う。