辛い物はスリルと似てる?怖いもの見たさで食べてるのかも

私は辛い物が苦手だ。大学時代、学食で期間限定の台湾風まぜそばを食べた時に辛さで胃を悪くして以来、辛い物とはかなり距離を取っている。その時は、台湾風まぜそばが今ほど世に知られていなくて、どんな食べ物なのか一度食べてみたいという一心で試してみたが、残念ながら苦い思い出となってしまった。
そもそもカレーライスですら、中辛を食べられる自信がない。メーカーによって同じ中辛でもルーの辛さが微妙に異なったりするので、ルー選びは慎重に行わないといけない。そんな訳で外で気軽にカレーを食べることができない。(そもそも外でカレーを食べるほど、カレーが大好物という訳ではない)
例えば、初めて訪れる店で何を食べようか迷った時にカレーを頼んでおけば間違いないという意見もあるだろうけれど、大抵の場合、辛さの表記がないため、辛かったらどうしようという懸念が頭をよぎる。もちろん、お店の人に聞けば、おおよその辛さを教えてくれるだろうけれど、世間の中辛を食べられるか怪しい私にとっては、食べられる望みは薄い。私にとって一番ピッタリなカレーの辛さは5段階中2である。しかし、この2に出会えるのはそう簡単ではない。
なぜ、辛い物が苦手なのか。それは単純に舌がヒリヒリするから。辛い物が好きな人は舌がヒリヒリしないのだろうか。それとも、ヒリヒリするけれど、それがむしろ快感なのだろうか。
辛い物が苦手な私でも日頃口にしているものがある。それは、ワサビと七味だ。この2つは冷蔵庫に潜んでいる。ワサビは醤油と相性が良い。アボカドをワサビ醤油で食べるのが好きだ。他にも、お刺身やそうめんなどの薬味として活躍する。ワサビがなくても特段困らないけれど、あった方がより美味しく感じる。
七味はうどんや炒め物にかけて食べる。瓶の穴が大きいので、真下に振る勇気はなく、いつもほぼ真横の角度で振りかけている。ある時、母親が瓶の穴にセロハンテープを貼って、穴を半分くらい塞ぐのを試みたが、イマイチだった。辛い物に対してはかなり臆病だ。
そうまでして、無理にワサビや七味を食べる必要はないかもしれないけれど、なんとなくパンチが欲しい時がある。ほんの少量しか使わないけれど、それが素材の味を活かしてくれる。
ある意味、辛い物はスリルと似ているかもしれない。辛いとわかっているけれど、食べてしまう。怖いとわかっているけれど、おばけ屋敷に行ったり、ジェットコースターに乗ったりする。(ちなみに、私は怖いものも苦手)怖いもの見たさ的な要素があるのかもしれない。
以前、勤めていた職場では休日出勤の際に決まってお寿司の出前を取ることになっていた。私がいつも手配をしていたのだけれど、ある時、職場の人がこっそり私に、「ワサビ抜きでお願いできないかな?」と頼んで来た。どうやら、その人はワサビが苦手だけれど、今までは我慢してお寿司を食べていたそうだ。その人いわく、「ワサビ食べられないってお子様じゃない?」という理由でなかなか言い出せなかったそうだ。私は自分が辛い物を食べられないことに関してお子様という概念を持ったことがなかったけれど、そう捉える人もいるのだなと思った。
私は辛い物が苦手なうえにコーヒーも飲めない。あの苦味が好きになれない。辛味にしろ苦味にしろ、ありとあらゆる刺激に弱いのかもしれない。けれど、それを言い出してもどうしようもないので、自分の舌にあった食事を楽しむのが一番だ。
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