誰もが認める「しごでき」だったはずの私が、入社3か月で休職した

大学時代の同期たちが今日は何だか騒がしい。
そっか、今日はボーナス日か。
皆のキラキラしたSNS投稿を見ながら、私は薄暗い布団の中で「休職」という言葉に想いを馳せる。
私が新卒入社したのは、とあるマスコミ系の会社。
学生時代の経験が生かせそうなことと社員さんの人柄に惹かれたことで入社を決めた。
実際、実務に入ると毎日が驚きと発見の連続で楽しかった。
尊敬する先輩方と個性豊かな同期に囲まれて、ここまで順風満帆な社会人生活もないのではないか……と感じていた。
ところが、最初の異変はゴールデンウィーク明けに起きた。
朝起き上がると、突如強烈な頭痛と貧血と吐き気に襲われた。その日は大人しく会社を休んだのだが、その頃から配属への不安や「周囲に嫌われているのではないか……」という妄想に取り憑かれるようになった。
最初は単なる「五月病」だと思っていた。
ところが、同時期に上司からのパワハラが始まったことで、事態は急激に悪化していった。
まず朝起きるのが、死ぬほどしんどい。
もともとルーティンワークが嫌いなせいか、どうしても身体が会社員の生活リズムについていかない。オフィスではマウスを握る手がずっと震えているし、息苦しさと動悸に襲われてトイレに駆け込む回数も増えていった。
さらに上からの指示出しミスによる作業のやり直しが続き、心身共に疲弊していった。
そして何よりも、上司の機嫌が、眠れる猛獣のような目が怖い。
あるとき、上司から密室でひとり暴言を吐かれたのをきっかけに涙が止まらなくなり、病院に駆け込んだ。
その結果「適応障害」と診断され、しばらく休職することになった。
まさか自分がこんなに早く休職するなんて思っていなかった。
せっかく大好きな会社に入れたのに、仕事で叶えたい夢もあったのに、学生時代は色々なことを頑張れたのに、どうして私だけこんな目に……?
そんな思いが頭をぐるぐるする中、脳内は半年前の光景を映し出す。
私は大学時代、とある学生団体の活動に力を注いでいた。
自分はその中でもまあまあハードな役職に就いており、時には会議や作業が深夜まで及ぶこともあった。だが、不思議なことに私はその役職を一度も辞めたいとは思ったことはなく、むしろ大好きな仲間のために働けることが楽しくて仕方がなかった。
その結果、周囲からは「しごでき」と言われるようになったのだが、私の中でもその言葉は一種の確固たるステータスであり、絶対的な自信につながっていた。
だから、そんな私なら社会人になってもきっと楽しく働けるだろうと固く信じていた。
だが今思えば、私があそこまで頑張れたのはあくまでも周囲の環境によるものであり、仲間や好きなもののために働くことと会社で働くことは全く別物なのだと痛感させられた。
そして私は、そのような恵まれた環境にいない限り、決して「しごでき」な人間にはなり得ないということも。
そう気づいた私は、布団から重い身体を起こしスマホを脇に置いた。
そして心の中で誓った。
私はこの休職期間中、自分が再び生き生きと働ける場所を絶対に見つけ出してみせる、と。
誰もが認める「しごでき」だった、あの頃のように。
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