「えいや!」とドイツに行った勇気は、沖縄移住を決めた私の原点だ

「あんたは決めたらピューッと突っ走って暴走しちゃうんだから」
母に呆れてこう言われたことがある。
たしかに人生で何度かは突っ走って失敗したこともあるが、明らかに成功例の方が多いと思っている。
いや、もしかしたら「走りながら正解にしている」のかもしれない。
この私の「えいや!」という精神はたぶん、学生時代に2度のホームステイを経験したことで築かれた。
最初は高校1年生の夏、学校の夏のプログラムで行ったイギリスだった。
もともと英語を学ぶのが好きだった私は、希望者を募るときに張り切って手を挙げたのを覚えている。
イギリスでは学校からの帰り道でバスを間違えて迷子になっては泣き、お別れ会では帰りたくなくて泣き。帰国してからも逆ホームシックで泣き。
たった1か月ほどではあったが、旅行以外で私にとっての初めての海外経験は自分自身を大きく成長させてくれて、大切な思い出をたくさんくれた。
と、ここまではよくある「良い話」だ。
そもそも元から学校の授業で英語を数年学んできて、最初からある程度コミュニケーションが取れるという安心感があったのだから。
「良い話」になるしかなかった。
2度目のドイツこそが、今考えるとなぜあのタイミングで?と思える唐突さだった。
大学のドイツ文学科で「ドイツ語学」を専攻していた私は、1年生の冬に同じ科の友人とホームステイに行くことを突然決めた。
きっかけは覚えていないが、よくあの初心者のドイツ語力で決意したものだ。
しかも、時期は2月。誰よりも寒がりの私が、なぜ極寒の冬のドイツに?
今考えると疑問ばかりで笑えてくる。
しかし、この「えいや!」も結果的に大正解だった。
ホストファミリーは子どもが巣立った優しい老夫婦。
私に与えられたのは、娘さんが使っていた広すぎる屋根裏部屋。
とっても居心地が良く、なんとお風呂まで付いていた。
拙すぎるドイツ語力ではあったが、暖炉のあるリビングで料理を作るホストマザーと話しながら、スープのレシピを教えてもらったことが嬉しかった。
ドイツは歴史的な背景からも親日派が多く、嫌な思いをしたことは一度もない。
ゴミの分別が厳しいため街がきれいで、公共交通機関のアナウンスも親切。
日本人にとって非常に住みやすい国だと思う。
ドイツの街並みや自然はとても美しく、建物は絵本で見たことがあるのとまったく同じ、積み木のようなかわいさだった。
家の近くにあった湖は冬になると凍結し、その上を歩くことができる。
落ちたらどうしようとドキドキしながら、ホストファミリーと買い物帰りに近道をしたのも良い思い出である。
学校帰りにも私は好奇心の赴くままに、雑貨屋さんや肉屋さんに寄り道をした。
どれも楽しかったけれど、ひとつ失敗したのはスーパーでの買い物だった。
何かひとつ買わないと出られないしくみになっており、まったく買う予定のなかったお菓子を買うはめに。
nutellaのスティック。いまでも見るたびにあの気まずさを思い出す。
これも小さすぎる失敗だけれど。
「ザ・ヨーロッパ」な環境で過ごした約1か月間があっという間に終わり、ドイツは1番好きな外国になった。
それなのに再び卒業旅行で訪れたあと、大人になってからは結局ドイツには行けていない。
そして私は仕事で英語は使うものの、ドイツ語を使う機会はまったくない大人になっている。
しかし、変わらない「えいや!」の精神は、私を憧れの沖縄に移住させてくれた。
またもや「好きなのと住むのは違う!よく考えなさい!」としょっちゅう喧嘩した母も、移住9年目ともなるときっととうの昔に諦めているに違いない。
そして、胸を張って言える。
沖縄移住は大正解で、故郷である東京で生きていた頃よりも、よっぽど肩の力が抜けて幸せで「私らしい」と。
大人になった私の「えいや!」は、それだけではない。
今年から思い切って飛び込んだキャリアスクールでの勉強を経て、やってみたかったライターとしての副業も叶ったのだ。
この先も一生、挑戦とは縁が切れない人生になりそうだ。
ありがとう、ドイツ。
いつか、また。
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