まさか私が流産するなんて。悲しみから救ったのは、夏の引越しだった

26歳で結婚し、1年間は夫婦2人の時間を楽しみたいと思っていた。北海道に新婚旅行に行ってウェディングフォトを撮ったり、憧れの軽井沢で結婚式をしたり、色々なところに旅行に行ったりと、たくさんやりたいことをやった。とても充実した幸せな時間を過ごした。落ち着いたら妊活を始めて、子供は2人くらい欲しいかなーと漠然と考えていた。
27歳になると、だんだんと周りの友達から妊娠報告や出産報告を受けることが多くなった。私の漠然とした人生設計に少しずつ焦りが出てきた。「私このまま妊娠しなかったらどうしよう、こんな軽い気持ちで大丈夫なのかな」と考えるようになった。
27歳の冬、結婚式を終えて本格的に妊活をスタートさせた。ネットで色々検索して基礎体温を測ったり、アプリを活用したり、妊活に良い食べ物や生活習慣を心がけた。
そして半年後、妊娠した。本当に嬉しかった。もちろんこの時は順調に行くと信じて疑わなかった。5週目で、無事に胎嚢が確認できた。次は2週間後の7週目に診察に行ったが、成長しておらず、心拍が確認できないと言われてしまった。「流産の可能性があるので次は1週間後に診察しましょう」と言われた。まさか私が流産するなんて思ってもみなかった。
でもまだ希望はある。信じようと決めた。そして忘れもしない4月7日、1週間経ったので診察に向かった。結局胎嚢は成長しておらず、心拍の確認もできずに稽留流産確定となった。
その時の気持ちと先生への対応や発言は正直あまり覚えていない。涙も出てこなかった。私は現実を信じたくなかったのだと思う。家に着いて、旦那はまだ帰ってきていなかった。無心で流産についてひたすら調べていた。
1時間ほど経って、旦那が帰宅した。「大丈夫?」と言われたが、やっぱり涙も出なくて無心で頷いていた。旦那は「絶対泣いているかと思った」と言った。
それから昼食を食べて、昼寝をした。旦那はいびきをかいて寝ていたが、私は眠れなかった。いきなり、滝のように涙が溢れてきた。自分でも、なんでこのタイミングなのかわからなかった。そのうち旦那が起きて、私が大泣きしている姿を見てびっくりした。「大丈夫だよ」と言われて、さらに泣いてしまった。
妊娠がわかる数ヶ月前にマイホームを購入していた。何度も打ち合わせがあり、とても忙しい日々を過ごしていた。流産を経験したその年の夏、引っ越しが決まっていた。引っ越しは2人で頑張ろうと決めていた。忙しい日々が私にとってとてもありがたかった。余計なことを思い出したり、考えたりしなくて済むからだ。夏の引越しは思ったより大変だったが、あんなにがむしゃらに汗をかいて無心で動いたのは、大人になってからあっただろうか。忘れていい事なのかわからないが、つらかった事をどうしても忘れたかった。
あの夏にかいた汗は、私を前進させるとても大切なものだった。後にも先にもこんな経験をする夏は無いと思っている。
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