厳しい練習もびしょ濡れの汗も。全部が今の私を作る糧になった

思い返してみると、最近は全然汗をかいていない。定期的に意識して運動をしているわけでもなく、買い物に行くにも仕事に行くにも日常的に車を使っており、ドアtoドアの生活を送っている。汗をかくといっても額や背中にじんわりと滲むくらい。
最後にダラダラと汗をたくさんかいたのはいつだっただろう。覚えている限りでは、中学生の時が最後だったかもしれない。
私の通う中学校は全員が必ず部活に参加しなければならなかった。一学年300人弱の学校で、選べる部活の種類も多かったのではないかと思う。選びたい放題の部活の中で私が選んだのはバレーボール部。小学生の時から運動が大好きで、中学校では絶対に運動部に入ると決めていた。しかし、バレーボールは未経験。なぜバレーを選んだのかは今でもうまく説明できない。直感で、これしかないと感じたのだった。
入ってしまってから知ったのだが、この中学の女子バレーというのは練習が厳しいことでかなり有名だったらしい。普段の放課後の練習に加えて、平日も夜練があった。土日や長期休みも練習試合に費やし、遠征にも行った。
父母会の集まりも頻繁にあり、自分のみならず親までもがハードなスケジュールをこなしていた。そして何よりコーチの厳しさが有名すぎた。「理不尽に耐えろ」をモットーに身も精神も削る練習。身体ダメージ、精神負担はみんな相当なものだったと思う。今の時代に同じ練習が行われていればグレーゾーン判定だと思うが、当時はその指導を客観的に考える暇もなく、とにかく必死にしがみついて食らいついていくしかなかった。
動き続けていれば汗も流れ続ける。前髪はびしょびしょで額に張り付き、滑り込みやローリングでボールを拾えば体育館の床もまたびちょびちょになった。それだけみんな汗をかいていた。その分水も飲むことになる。普段は1リットルの水筒を持ち歩いていたが、当然その量で足りるわけもなく、何回も何回も水筒の中身を補充していた。
言葉にして書き出してみると、それだけ汗をかくくらい動いていたんだなと改めてびっくりする。今の生活では考えられないし、今同じことをしろと言われても到底無理だろう。倒れてしまう。中学卒業後も高校で別の部活に入って、そこもまたハードではあったが、中学の時ほど汗はかいていないように思う。やはり中学生のあの頃がピークだったのだ。
厳しい部活で汗と同じくらい涙も流した。怪我もしたし精神的に追い込まれた日もあった。その当時は本当に目の前のことでいっぱいいっぱいで、辛かろうが悔しかろうが足を止めようと考える暇もなかった。
時間が経った今冷静に考えると、現代でいえば体罰だったとか、親がコーチと仲が良ければ子供も試合に出してもらえるシステムとか、物申したい点は多々出てくる。辛くて悔しくて、でも、仲間と団結したり良い結果にみんなで喜んだりした記憶も確かに存在する。
あの頃を眩しくも羨ましくも思う。あの時流したたくさんの汗は決して無駄ではなくて、今も何かしらの糧となって私と共に在ると、純粋にそう思えるのだった。
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