私には好きな人がいた。
付き合ったがすぐに別れた。
別れて寂しかったからSNSで繋がった方とお付き合いした。ただ単純で最低な理由だ。
その人とは3年付き合った。遠距離恋愛だった。
めちゃくちゃ好いてくれた。とことん愛してくれた。
私ももちろん好きだったことは紛れもない事実である。
しかし心のどこかに、自分の寂しさが故の付き合いだと感じてはいた。
そのひっかかりがずっとあった。

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そんな中、職場で気になる人ができた。
話していて居心地が良く周りをしっかり見て動ける優しいちょっと歳上の人だった。
向こうも気になってくれていたらしい。

気づいたら連絡先を交換して付き合うことになった。
と、同時に3年付き合ってもうすぐ4年だった彼に別れを告げた。
「別れたい」。

結婚も考えていたこともあり、今までの思い出が走馬灯のように頭によぎり涙が出た。
その涙には、寂しさでもなく悲しさでもなく言葉にできない感情で、生まれて初めて感じた感情だった気がする。
苦労するとわかっていても心から好きな人といるのが幸せか、はたまた安定をとった好かれる人といるのが幸せか。
正解はない。何を正解にしていくのかは自分次第。

でもあの瞬間、私は「自分の心に正直でいたい」と思った。
好かれている安心感に甘えて過ごすこともできた。
きっとそのまま結婚して、穏やかで不自由ない生活を送る未来もあっただろう。
けれどその未来を想像したときに、胸の奥に小さな違和感が残り続けていた。

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「私は本当に幸せだろうか?」
「心の奥から笑えているだろうか?」

その問いが消えることはなかった。
新しい相手といるときは自然体でいられる。
取り繕わなくても、無理に「好きだ」と証明しなくても、ただ一緒にいるだけで心が落ち着く。

会話が続くとか、趣味が合うとか、そういう表面的なこと以上に呼吸が合うような感覚だ。
もちろん、そこには苦労も待っている。
価値観の違い、環境の違い、年齢の違い。
乗り越えなければいけない壁もたくさんあるのは充分分かっている。
でも私は思った。

「幸せって、誰かから与えられるものじゃない」
「安心できる未来を選ぶことが幸せなのではなく、自分で選んだ道を歩むからこそ幸せになれる」

そう気づいた時、3年間一緒にいてくれた人への感謝が溢れ出た。
彼がいてくれたからこそ、私は「人にこんなに大切にされる」という経験を知ることができた。そしてその経験があったからこそ、自分の気持ちに正直であろうと思えた。

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別れは残酷で、わがままだったかもしれない。
でも私は、ようやく自分の人生を「自分のために」選ぶことができたのだと思う。

この話をここまで読んでくれた人に伝えたい。
誰かを傷つけたくない、裏切りたくない、そう思って自分を押し殺してしまう瞬間があるかもしれない。

でも、最後に責任を持つのは自分の人生であり、自分の心だ。
だからどうか、自分の幸せを優先してほしい。
たとえその選択が遠回りに見えても、不器用に見えても、そこには必ず「あなたにしか味わえない幸せ」が待っていると。