留学に行きたいという夢がいつから生まれたかはわからない。記憶にあるのは大学生の時だ。皆がよく行く1ヶ月の語学留学ではなく、1年くらい専門科目を学べる留学がしたいと考えていた。

しかしながら、その夢は叶うことはなかった。というのも、日本での授業が忙しく、留学をしようとなると休学を余儀なくされるからだ。浪人で周りから1年遅れていた私にとって、1年の休学は色々と思うところがあって厳しかった。

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大学4年生になって研究室に配属された。研究室に配属されると今度は研究で留学に行きたくなった。しかし、指導教官は私が留学に行くことに消極的だった。「留学は一か八か。旅行じゃないから」とのことだった。

教官の言ってることはわかる。けど、旅行じゃないと言われるとちょっと腹が立つ。別に私も旅行で行きたいわけじゃない。遊びのつもりは毛頭ない。世界で活躍したいと思って何が悪い。
その後、研究室から逃げるために留学をしようかと考えたこともあったが、コロナ禍と重なり結局このタイミングでも行くことはできなかった。

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就活が始まってから、再び留学をするかどうか悩み出した。正直そこまで留学したいという気持ちが強い自分に驚いた。あまりに思いが強く、周りで留学に行く人に対して嫌な気持ちになったりもした。
就活中、留学をしたいという夢を叶えずに、社会人になってしまっていいのだろうか、という悩みがずっと脳裏に浮かんだ。
しかし、結局この時も、留学じゃなくて旅行でいいじゃんとか色々と自分に言い訳をしながら、留学を諦め、就職することにした。

社会人になって、会社から留学できるチャンスがあることがわかった。ただ、少数しかない枠に、会社が私に行かせてあげたいと思われるかどうかはまた別の話だった。
直感だが、上司に行かせてあげたいと思われている気はしなかった。それに、今の仕事内容が面白いわけではないのに、その分野で留学するのも変な話だなと思った。

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ここで、もう一つ選択肢が浮かんだ。会社を辞めて留学するという手だ。
知り合いの教授も留学するべきと後押ししてくれた。
そこで私は海外の研究室にコネを必死に作り、奨学金を調べ、英語の勉強を始めた。それなりにちゃんと留学準備をしていた気がする。
それでも、どこか本気になれていない感じがあった。一度社会人になってしまうと、お金を稼ぐ手段がなくなるのは怖い。それに、すでに夢を叶えた職業についているのに、今更辞めるというのは本末転倒なのではないだろうか。

どうして本気になれないのだろう。こんなに行きたいのに。そんな時、いつも良くしてくれている人にこんなことを言われた。

「今は行くべき時ではない。そういう時に足掻いても仕方ない」

その人曰く、時が来たら自然と道ができるとのことだった。その言葉でやっと肩の荷が降りた。どこか焦りみたいなものがあったが、今がその時ではないのなら、私にはどうしようもないのだ。

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結局、ずっと留学とは縁がないままでいる。どこか私が本気になれていないのも、きっと今がその時ではないからだろう。いつか、その時が来たら良いなと思いつつ、今はひたすら準備だけをしている。