過去、勉強は私にとって義務でしかなかった。だから大学で学ぶこと、更にその最中になぜわざわざ海外に留学までするのか。「勉強」の持つ意味を知らなかった私には理解できなかった。

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だって大学で4年も勉強をしなくてはならないのに、そのうえ、留学などしたら卒業が延びるではないか。
このうっとうしい勉強というものから解放される日が遠のくのだ。
信じられないなあ、という感想。

留学の留は留年の留と同じ、おお嫌だ、と思ったものだ。
20代の私は勉強などとは無縁に給料をもらう勤め人としての現状に満足していた。
昭和58年ごろのことで、身近に留学する人もいなかった。
そもそも留学には費用だってかかるのだろうし。自分とは無縁だったのだ。

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その後、時代は大きく変わった。そして今、自分は何とちっぽけなことか。
何も知らない、問題解決のスキルを持たない私。上を見ても下を見てもきりがないと言えばそうかもしれないけれど自分の中身が小さいことはQOLを下げることだなと痛感する。

もっと勉強をしておけばよかった。

でも今の私は「勉強」なんていつでもできることを知っているつもりだ。
誰かとの会話ひとつからでも「学び」はあるのだし、図書館には本がいっぱいあり、ネットには情報が溢れている。
縁遠かった大学だって社会人入学や通信生など門戸を開いている。

そして驚くことには「シニア留学」というものもあるらしい。海外まで出かけていったい何を学ぶというのか。そう思っていた自分にこう言ってやりたい。
はじめての土地の空気を吸い、五感を働かせて自分の中のいろんな感情をキャッチする。
新鮮さ、発見、驚き、不安、楽しさ、感動、落胆、感謝…。ひとつでも多くどんなことでも拾い上げて無駄にしないで過ごす。

そうした時間の先には今とは違った自分にあえるはずだと。

もうすぐ仕事をリタイアする予定の私は、マジでシニア留学の記事を見つめる。
英語の1つもしゃべれない私、内弁慶な私、社会情勢に疎い私…。
海外旅行でさえハワイに一度行ったことがあるだけだ。
留学というものに行ってみたいかと自問すれば、否と言う私がいる一方で、もし行ってみたらどうなるだろうなと興味がわく自分でもある。

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じゃあ、もしもの予定だけでも考えてみるとして…どこへ行って何をするか、したいか。
いつ行くのか。予算はどうするのか。等々、考えてみると意外と返事が早いではないか。
先はイギリス。

私は大のピーターラビットファンで絵本やビンテージのグッズを長年、集めていてそれらを眺める時、ピーターの作者、ポターさんの暮らしていた湖水地方に行ってみたいと
かねがね思っているから。

あいさつ程度の英語とボディランゲージでもってこの地を散策しピーターとビアトリクスポターさんに関する見聞を深めたい。
できればステイ先はピーターファンの方のお宅を希望したい。梅雨の日本を脱出してベストシーズンの6月ごろの予定としたい。予算はケチらない。しっかり英国のお茶や音楽なども楽しみたい。体調も考慮して一カ月程度。甘々な予定ではあるけど…これが私の留学プラン。

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夢を持つことは大切だ。
やりたいことをやれるときにやってみよう。
地に足をつけて自分で舵を切って行く。
いつか縁が来て、ちっぽけな私が海外で学ぶこと。
可能性はゼロなんて誰にも断言はできないだろう。
願えば叶うということも信じよう。