どんどん増えていく夢を抱えて生きる。今しかできないことをしよう

昔から特別に、これといってなりたい、叶えたいと思うような夢がなかった。
いや、最初から何もなかったわけではない。幼稚園のときはパティシエになりたかった。大人になったらプリキュアになれると思っていた。物語の世界に魅せられて作家にもなりたかった。一瞬だけ花屋に憧れて、神楽を舞う巫女を見て素敵だと感じたこともあった。
どれもこれも、きらきら輝く大切な夢。それらの夢は現実にはなることができないものや、運や才能が関わっているなど実際職業にして生活するのは大変なことだと知るようになった。
その頃には、そこそこ大変で給料も少なくない職業ばかりを見るようになっていて、色彩のない白黒の未来を見ていた。安定した職業につきたくて中学・高校では勉強に励み必死に志望大学を目指した。私がやりたいこと、興味のあることが定まらなかったために、大学の学部選びも大学に入ってからもずっと、悩みはつきなかった。大学を受験するときは建築士を志し、建築士の受験資格を得るための授業を取った。
そんな中、私はこの夏、大きな決断をした。来春から大学院に進学するのだが、大学時代と専攻を変えて大学院では別の分野の研究をすることにした。大学院でも専攻を同じくして同じ先生のもとで研究を続けていくことは、より自身の研究内容を深めることができ就職活動にも活かせるのではないか。現実的に考えればそちらの方が合理的だろう。しかし、心のどこかで私はこのままでいいのかな、とも思っていた。建築業界をちらりとのぞいただけだが、私が本当に興味を持って関わりたいのは別にあるのではないか、と思うようになった。
建築の中でDXなどの最新技術を用いた分野に興味があった。それは、大学時代に取り組んでいたプロジェクトがそれに近いようなことをしていたからかもしれない。もしかしたら私は、従来の建築の関わり方ではなく、DX関連でならやりがいを持って取り組めるのではないか。そちらの方が自分に向いているのかもしれない、とも思うようになった。大学一年生のときから私と一緒にプロジェクトを進めてくれている先生のもとで、大学院での研究をしたいと思った。学部の建築でお世話になった先生も、私の選択は正解だと思う、と言ってくれた。この選択が正しいのか間違っているのか、今はまだ分からないけれど。私を信じて同じ方向を見て、真摯に向き合ってくれる、そんな先生との数年間で経た関係と信頼を、私は無視することができなかった。建築士になる夢を諦めたわけではないが、今まで学部で学んだことを活用して社会問題に取り組むことができれば、自分が本当にやりたいことが見えて将来の可能性が広がるような気がした。私が自分で選んだ道だ。
私はきっと欲張りで、未だに子供の頃の夢を諦められない。1つには絞ることもできなくて、どんどん増えていくばかりだ。大抵の人は野球選手だとかピアニストになる、とか1つの大きな夢を抱くのだろうけれど。一途に1つの夢を追いかけている人からしたら、何それ?と批判されるかもしれない。それは決して夢なんかじゃない、と否定されるかもしれない。
それでも私は、夢をたくさん抱えて生きていく。プリキュアを見ると、今でも強くて正義感のある女の子たちが活躍する姿に、勇気づけられる。大学院に進学するという選択を、新たな課題に向き合うという決意を正解にするため、私は今日も前進する。社会人になるまであと二年と半年。今しかできないことをしよう。私はそっと心に誓った。
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