2006年2月のある日。高校2年、16歳だった私はケータイ片手に、地元のカラオケ店の前で待ち合わせをしていた。
これから会うのは隣の高校に通う男子生徒だ。学校裏サイト経由で私のホムペに遊びに来てくれて、メールのやり取りをするようになった。
今日、この人とーーエッチすることになる。いよいよロストバージンだ。

予想外の展開。思っていた以上にショックを受けている自分に驚いた

「着いたよ」
彼からのメールが届いた。顔を上げると、少し背が高く痩せ型の青年がいた。思っていたより普通っぽい人だ、と思った。もっと軽そうな雰囲気の人かと思っていた。
私たちはそのままカラオケ店に入る。共通の知り合いの話などを軽く話したあと、いよいよ「そのとき」になった。

しかし、結局、「最後までする」ことにはならなかった。
私が生理になったからだ。
ーーロストバージンに失敗してしまった。

2週間後、久々に彼にメールを送ってみたところ、エラーになった。
「え……」
予想外の展開だった。そして、思っていた以上にショックを受けている自分に驚いてしまった。別にこの人は、好きな人でも恋人でもなかったというのに。

「身体を求められた。どうしよう」という女友達とは真逆の悩み

ーーそもそも、付き合ってもいない相手と何故こんなことをしたのかというと、純粋な性欲と好奇心だった。
小・中学生時代にいじめに遭い、「キモい、汚い」と言われて避けられてきた私は、「こんな自分に欲情する人がいるのだろうか」という感情をずっと拭えずにいた。
高校は、地元から少し離れた学校に進学した。いじめ経験はリセットできたつもりでいた。高1のときに2人の男子と付き合うこともあった。けれど、私が好むタイプは真面目でおとなしくシャイな人たちばかりで、この2人とも手を繋ぐこともなく別れてしまった。
一方で同級生の女友達には「彼氏から身体を求められたけど、どうしようか躊躇ってる」という悩みを持つ子もいたが、私の悩みは真逆だった。
彼氏からスキンシップを求められることがなく、好かれている自信が持てなかった。かといって、女の私から行為を求めることも、女としてのプライドによって憚られた。
こちらからの働きかけなしに身体を求められる女友達と、こちらから動かないと身体を求められることのない私。
この非対称性が惨めに感じられた。

どうしたら、ロストバージンし損ねたことをこじらせずに済んだのか

私は高1のときに付き合った彼氏2人よりも、高2の冬にロストバージンし損ねた相手から連絡を断たれたことのほうをしばらく引きずっていた。女子はエッチした相手をより好きになるけれど男子はその逆である、ということを雑誌かどこかで読んだとき、妙に納得したのを覚えている。

学校の性教育については、近年は民間の団体も学校で講義を受け持つことがあると聞く。私が中高生の頃に比べると、現実に即した丁寧な内容が増えてきているようだ。それはとても良い流れだと思う。
そしてーー避妊や性感染症、セクシャリティやジェンダーに関しては理解を深める取り組みも増えてきているけれど、「セックスした後の思わぬ感情」についての取り扱いや、未成年が恋人以外の相手と合法的にセックスを楽しむためのサービスや関係構築については、「中高生の性」の問題としてはなかなか俎上に上がることが少ない気がする。
男子の中には、高校時代からお金を貯めてこっそり性風俗店で遊んでいた者もいたと聞く。女子高生だった私も、可能ならば同じようなことをしてみたかった。

私はどうしたら、ロストバージンし損ねたことをこじらせずに済んだのだろうか。誰とどうやって、どのような関係構築ができれば幸せになれたのだろうか。高校時代の恋を思い出すたび、毎度、身勝手な古傷が疼く。